阿部サダヲの目に震えるサイコ・サスペンス
『死刑にいたる病』
『凶悪』『孤狼の血』シリーズの白石和彌監督が、ミステリー作家・櫛木理宇の『死刑にいたる病』を映画化したサイコ・サスペンス。
名古屋での舞台挨拶取材のため、ひと足お先に試写で鑑賞。
白石監督自身が『凶悪』と入口が似ていると
インタビューで答えていたけど、
死刑囚と繋がった主人公を通して恐ろしい事件の真相が明かされていくのは『凶悪』と同じ。
でも本作は常人の理解を超える連続殺人鬼と、
彼が訴える冤罪事件をめぐってストーリーが思わぬ方向へ転がっていくサスペンスになっている。
小さなパン屋を営みながら、多数の少年少女を殺害。
24件の殺人事件で逮捕、9件で立件・起訴された連続殺人鬼・榛村大和を演じたのは阿部サダヲ。
普段の穏やかで優しい佇まいのまま、淡々と人を殺してしまうのがとにかく怖い。
殺害シーンも凄惨極まりなく。ただただ気持ち悪かった。
なかでも印象的なのがその目。
黒目が大きいのか、やけに吸引力があって闇が深そうな感じ。
名古屋の舞台挨拶で白石監督も『彼女がその名を知らない鳥たち』で陣治を演じた阿部サダヲの目が忘れられなかった、あの目の榛村が見たかったと話してた。
そんなサイコキラー・阿部サダヲに対するのが岡田健史。
榛村から一件の冤罪証明を依頼され、独自に調査する大学生・筧井雅也を陰鬱な空気を纏いつつ熱演。
白石監督も真っ直ぐで迫ってくるような目と、芝居への取り組みを絶賛。
2人が対峙している画を撮るだけで、イコール映画である感じがしたとか。
そしてもう1人、観客はもちろん、阿部サダヲも現場で気付かなかったというほど、驚愕の変貌ぶりを見せているのが、名古屋が生んだスター、岩田剛典。
『ウェディング・ハイ』でも最後にトンデモないことになってたけど、今回は長髪で暗い謎の男に。
岩ちゃんすごいわ。攻めてるね。
さて今回の写真では、パン屋の店主・榛村と中学生の雅也の思い出のBLTサンドとオレンジジュースをピックアップ。
榛村が雅也に優しく接するこのシーンのやり取りも、裏の顔を知っていると薄気味悪く感じるのよね…
目次
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲
公開 2022年5月6日全国公開 ©2022映画「死刑にいたる病」製作委員会 配給 クロックワークス 出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、中山美穂 監督:白石和彌 脚本:高田亮 原作:櫛木理宇「死刑にいたる病」(ハヤカワ文庫刊) 公式HP:siy-movie.com twitter:@SIYmovie