80年代の空気を再現した青春映画
『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』
1980年代、イギリスのミュージックシーンを席巻した伝説のバンド ザ・スミス。
その解散が報じられた1987年9月、コロラド州デンバーの5人の若者が過ごすある一夜を描いた本作。
関係者やファンの間で長年語り継がれた〝ザ・スミスファンのラジオ局ジャック事件”に着想を得て作られた映画だそうで、ザ・スミスの20以上の楽曲が登場人物の揺れ動く感情を彩り、若き日のモリッシーのインタビュー映像も流れるなど、ファンにはたまらない作品となっている。
とはいえ、ザ・スミス ファンじゃなくても楽しめるポイントも。
ジャンルの壁を超えて深まっていくヘヴィメタ好きのラジオDJと、ザ・スミスを愛するジャック犯の関係や、「聴くと涙が出る曲は、お前らを救うと覚えとけ」というセリフは全音楽好きに刺さるし、モッズコート、スイングトップ、ツイードのロングコート、アップにしたふわふわ髪にスカーフを巻き、アクセサリーをジャラジャラ重ね付けしたマドンナ風スタイルなど、80’sファッションも楽しめる。
80年代の気分を再現しつつ、まだ何者でもない若者が感じる世間や自分への失望と苛立ち、将来への不安、恋愛の悩みなどが描かれる普遍的な青春映画に仕上がっているのがいい。
さて今回の写真は、タイトルの「ショップリフターズ」=万引き犯たちにちなんだアイテムを。
ラジオ局をジャックするレコードショップの店員が、想いを寄せるスミスファンの女の子。
彼はいつも彼女の万引きを見逃していて、彼女が彼の目の前で盗っていくのがカセットテープ。
ほかにもレコードやポラロイドカメラなど、アナログなアイテムが多数出てきて、めちゃくちゃ懐かしかった。
2021年製作/91分/G/アメリカ・イギリス合作 原題:Shoplifters of the World(C)2020 SOTW Ltd. All rights reserved 配給:パルコ https://sotw-movie.com/#modal (C)2020 SOTW Ltd. All rights reserved
[フォトdeシネマ]
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映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲