映画「福田村事件」森達也監督にインタビュー(動画)

関東大震災から100年の時を超えて、ついに事実に基づいた未だかつてない映画が公開される。「A」「FAKE」『i-新聞記者ドキュメント』など骨太のドキュメンタリーを手掛けてきた森達也監督が、関東大震災直後に起きた福田村事件を基にした群像劇「福田村事件」とは?

森達也監督に単独インタビュー

森監督:これは「群像劇」です。大勢の中から自分の姿を探してください。

監督: 森達也

1956 年 5 月 10 日、広島県呉市生まれ。95 年の地下 鉄サリン事件発生後、オウム真理教広報副部長であ った荒木浩と他のオウム信者たちを被写体とするテ レビ・ドキュメンタリーの撮影を始めるが、所属する 制作会社から契約解除を通告される。最終的に作品 は『A』のタイトルで 98 年に劇場公開され、さらに ベルリン国際映画祭など多数の海外映画祭に招待さ れて世界的に大きな話題となる。

99 年にはテレビ・ドキュメンタリー「放送禁止歌」を発表。2001 年には映画『A2』が山 形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。映画作品は他に『311』(11)、 『FAKE』(16)、『i~新聞記者ドキュメント』(19)などがある。 2011年「A3」(集英社インターナショナル)が講談社ノンフィクション賞を受賞。他の 著作に、「放送禁止歌」(光文社智恵の森文庫)、「職業欄はエスパー」「いのちの食べかた」「死 刑」「クォン・デ~もう一人のラストエンペラー」(角川文庫)、長編小説作品「チャンキ」(論 創社)、「すべての戦争は自衛から始まる」(講談社文庫)、「U 相模原に現れた世界の憂鬱な 断面 (講談社現代新書)」などがある。近著は「千代田区一番一号のラビリンス」(現代書館)。

映画「福田村事件」とは?

多くの国を巻き込み、初めて国家の総力戦となった第一次世界大戦が 1914 年に勃発。18 年 に戦争は終結したが日本国内では深刻な不況となり、18 年に米騒動、シベリア出兵、19 年 には日本統治下の韓国で 3.1 独立運動が起き、騒然とした時代となっていた。そして、世界 中で猛威をふるったスペイン風邪が 19 年の夏に日本に到達、不況と相まって多くの市民の 不満は沸点に達しようとしていた。時の政権は疲弊した市民の不安、不満を国外に向けさせ ることに躍起になった。そのような複雑な背景を抱え込んでいたなか、1923 年 9 月 1 日 11 時 58 分、関東大地震が発生した。帝都東京では、流言飛語が飛び交い、不安と恐怖が錯綜 する中、いつしかその矛先は社会主義者や朝鮮人に向けられて行くことになる。地震発生か ら 5 日後の 9 月 6 日、千葉県東葛飾郡福田村に住む自警団を含む 100 人以上の村人たちに より、利根川沿いで香川から訪れた薬売りの行商団 15 人の内、幼児や妊婦を含む 9 人が殺 された。行商団は、讃岐弁で話していたことで朝鮮人と疑われ殺害されたのだ。逮捕された のは自警団員 8 人。逮捕者は実刑になったものの、大正天皇死去の恩赦で 2 年後に釈放され た…。これが 100 年の間、歴史の闇に葬られていた『福田村事件』だ。

100 年の時を超え、遂に、実話に基づいたかつてない日本映画が公開される。

ストーリー

大正デモクラシーの喧騒の裏で、マスコミは、政府の失政を隠すようにこぞって「…いずれ は社会主義者か鮮人か、はたまた不逞の輩の仕業か」と世論を煽り、市民の不安と恐怖は徐々 に高まっていた。そんな中、朝鮮で日本軍による虐殺事件を目撃した澤田智一(井浦新)は、 妻の静子(田中麗奈)を連れ、智一が教師をしていた日本統治下の京城を離れ、故郷の福田 村に帰ってきた。同じ頃、沼部新助(永山瑛太)率いる薬売りの行商団は、関東地方へ向か うため四国の讃岐を出発する。長閑な日々を打ち破るかのように、9 月 1 日、空前絶後の揺 れが関東地方を襲った。木々は倒れ、家は倒壊し、そして大火災が発生して無辜なる多くの 人々が命を失った。そんな中でいつしか流言飛語が飛び交い、瞬く間にそれは関東近縁の町 や村に伝わっていった。2 日には東京府下に戒厳令が施行され、3 日には神奈川に、4 日には 福田村がある千葉にも拡大され、多くの人々は大混乱に陥った。福田村にも避難民から「朝 鮮人が集団で襲ってくる」「朝鮮人が略奪や放火をした」との情報がもたらされ、疑心暗鬼に 落ち入り、人々は恐怖に浮足立つ。地元の新聞社は、情報の真偽を確かめるために躍起とな るが、その実体は杳としてつかめないでいた。震災後の混乱に乗じて、亀戸署では、社会主 義者への弾圧が、秘かに行われていた。そして 9 月 6 日、偶然と不安、恐怖が折り重なり、 後に歴史に葬られることとなる大事件が起きる――。

映画「福田村事件」概要

 

監督:森達也 脚本:佐伯俊道 井上淳一 荒井晴彦

出演 井浦新 田中麗奈

永山瑛太

東出昌大 コムアイ 木竜麻生 松浦祐也 向里祐香 杉田雷麟 カトウシンスケ

ピエール瀧 水道橋博士 豊原功補 柄本明

 企画:荒井晴彦 企画協力:辻野弥生 中川五郎 若林正浩


統括プロデュ―サー:小林三四郎 プロデュ―サー:井上淳一 片嶋一貴

アソシエイトプロデュ―サー:内山太郎 比嘉世津子 音楽:鈴木慶一
撮影:桑原正 照明:豊見山明長 録音:臼井勝 美術:須坂文昭 装飾:中込秀志 衣裳:真柴紀子 ヘアメイク:清水美穂 編集:洲﨑千恵子 助監督:江良圭 スチール:佐藤芳夫 メイキング:綿井健陽
美術監修:磯見俊裕 
特別協力:真宗教団連合 集英社 
協力:東映京都撮影所 松竹撮影所 モノポライズ 文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
【2023 年|日本|DCP|5.1ch|137 分】(英題:SEPTEMBER1923) ©「福田村事件」プロジェクト 2023 映倫番号:PG12-124008
配給:太秦 製作プロダクション:ドッグシュガー 製作:「福田村事件」プロジェクト(株式会社テンカラット、株式会社カタログハウス、辻野弥生、株式会社ピカンテサーカス、MBS、株式会社ドッグシュガー、太秦株式会社)

www.fukudamura1923.jp

 

 

おいしい映画祭

アーカイブ