すっかり、フグの世界に監督が魅せられてしまったことがスクリーンからひしひしと伝わってくる。それはドラマティックな劇伴からも細かいカット割りで観客を飽きさせないような編集からも全国のフグ職人へのインタビューからも観て取れる。だから面白い。そうか、毒のあるフグにここまで執着して食べようとするのは日本人しか居ないのだとしたら映画にしないわけにはいかない。

冒頭でフグ調理師免許にかける若き女性2人に焦点を当てていくのかと思いきや、そもそもフグの毒はどこにあるのか、フグと言ってもいろんな種類があり、調理の仕方も捌き方も包丁の入れ方も地域により異なり、調理師免許も国家試験になっていないという話にまで発展していく。確かに毒魚なのだから免許を持たないものが調理し、食したら場合によっては命を落としてしまう。

そう思うとフグ料理は奥深い。更に興味深いのは研究者を巻き込んだ「論争」により、市同士のバトルへと展開していくのだ。フグ料理界の改革か、伝統か、それはフグという高級料理の格を揺るがす問題だと気付かされる。しかも各地のフグ職人達が命を預かる調理として資格を重んじ、てっさというフグ刺しの伝統芸を継承し、美味しさを広めようと日々、探求しているのだ。だからヒーロー映画が似合いそうなダイナミックな劇伴なのか!?いやはや、これはフグ職人だけの話ではない、全ジャンルの職人の想いを映像化した「技」への愛が詰まりに詰まった情熱と歴史の話だった。

『GUN FISH あなたの知らないフグの世界』
監督:宇野航
出演:行木由香里、真貴田雄一、亀井一洋、北濱喜一、林莉、平尾泰範、串田晃一、荒川修、小川明秀、澤原將人
ナレーション:斎藤工
配給:KeyHolder Pictures
2026年/日本/110分
9月4日(金)より全国公開
©GUN FISH FILM PARTNERS
🔗https://gunfish.keyholderpictures.com/
—————————————————–
伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)
映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。




