フランスって社会問題を扱いながらシリアスにならず、軽やかな作品に仕上げるのが本当に上手い!
本作は、移民の子どもたちを調理師として育成する社会活動を題材に、一流レストランを辞めたシェフと、自立支援施設で暮らす移民の少年たちの交流を描く、クスッと笑えて、じんわり心温まる社会派コメディ。
人付き合いが苦手な頑固なシェフと、様々な背景や事情を抱えた移民の少年たちが、料理を通して繋がってひとつのチームになっていく。
97分と短い時間に旨味が凝縮されていて、頑なな心がふっとほぐれ、触れ合う瞬間にグッと心を掴まれる。
なんと、この移民の少年たちを演じているのは、オーディションで300人の中から選ばれた実際にパリの移民支援施設で暮らす若者たち。
演技初体験ながら、イキイキとした笑顔が魅力的で、観ているこちらも思わず笑顔に。
シェフのカティ・マリーと同じく母親のような気持ちで見てしまった。
実在の人物をモデルにした主人公、カティ・マリーを演じたオドレイ・ラミーは、一つ星レストランで数ヶ月間、シェフから指導を受けたそうで、まるで本物のプロの料理人のよう!
そして『最強のふたり』のフランソワ・クリュゼが、施設長のロレンゾ役で存在感を発揮。
松葉杖を付いているのは役の設定かと思ったら、サッカーシーンの撮影中にアキレス腱断裂したとか。
それでも監督は、続投を望んで彼の退院を待って撮影を続行したそう。
いや、怪我しても休めないなんて役者って大変!!
さて、今回の写真のアイテムは料理。
映画では「ビーツのパイプオルガン」をはじめ美味しそうなフランス料理がたくさん出てくるけれど、私にはフランス料理はムリ!なので、今回はリングイネと季節の野菜を。
衝突して険悪なムードになっていたカティと少年が和解するシーンで、夕食のメニューに出されているのがこれ。(季節の野菜…ではないけどそこは大目にみてw)
料理を食べた少年が言う「美味いです、シェフ」の一言にジンとした。
「ウィ、シェフ!」現在公開中!
2022年製作/97分/G/フランス
原題:La Brigade
配給:アルバトロス・フィルム
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲