伊藤さとりの映画で人間力UP!『EO イーオー』

 

動物映画の歴史に刻まれる映画『EO イーオー』

ロバが登場する映画

劇中に登場するロバというと本年度アカデミー賞にノミネートされ、授賞式にも登壇した『イニシェリン島の精霊』(2022)の主人公の親友ジェニーが記憶に新しいですよね。もはや主演クラスの演技で涙涙でありました。そんなロバが主演の映画であり、昨年のカンヌ国際映画祭でも話題を呼んだポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキ監督の7年ぶりに新作『EO』が5月5日(金)に公開。

 

 

 

 

ロバのEO(イーオー)は、サーカス団で優しい女性カサンドラと共にパフォーマンスをしていたものの、動物愛護団体によるデモのせいでサーカス団から連れ出されてしまいます。それはEOにとって長い放浪生活の幕開けで、ポーランドのサッカーチームの祝杯に参加させられたり、どこか影のあるイタリア人司祭や伯爵夫人との出会いを経て、自らの運命を目にすることになります。

イエジー・スコリモフスキ監督といえば世界三大映画祭(ベルリン、カンヌ、ヴェネチア)で賞を受賞しているヨーロッパを代表する映画人のひとり。だから本作では、『ピアニスト』や『エル ELLE』などで数多くの映画賞を受賞するフランスの大女優イザベル・ユペールまでちらりと出演しているんです。なんて豪華!それにしてもEOの姿が景色に溶け込んでまるで絵画のよう。ポーランドからイタリアまでのロバの旅は、言葉がなくとも横顔や瞳、動作だけで戸惑いや悲しみを観客が汲み取れるほどの名演技でした。だからアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされ、フランスでは10万人を超える大ヒットを記録したんですよね。

 

 

 

 

監督が1966年のロベール・ブレッソン監督の映画『バルタザールどこへ行く』から着想を得て、ロバの視点を通して人間の愚かさや傲慢さ、愛情、悲しみを描いた本作。そんなイエジー・スコリモフスキ監督が、ルックスに惚れ込んでキャスティングしたEO役のロバのタコへどうやって演出したのかというと「耳元に囁き、愛撫すること」だそうで。その結果、ロバのすぐ近くで撮影することに成功し、“感情を捉える映画”として完成したのでした。これぞ、セリフに頼らずに感情を読み取る人間の力を信じた映画作りと言えますよ。

 

 

 

 

動物映画を撮りたい方は絶対、観た方がイイ!そして何度でも観たくなる愛おしさと切なさで完全にEOにノックアウトされるから!

『EO イーオー』

5月5日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他にてロードショー
監督:イエジー・スコリモフスキ 脚本・製作:エヴァ・ピアスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ
出演:サンドラ・ジマルスカ、ロレンツォ・ズルゾロ、イザベル・ユペール
2022/ポーランド、イタリア/カラー/ポーランド語、イタリア語、英語、フランス語/88分 映倫:G
後援:ポーランド広報文化センター 配給:ファインフィルムズ© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED

 

伊藤さとり

映画パーソナリティ(映画評論・映画解説/心理カウンセラー) 

ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmagDJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTVZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FMJFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。

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