英国アカデミー賞をはじめ、各国の映画賞81部⾨ノミネート、43映画賞を受賞した本作。
ある事件で亡くなった高校生の被害者の両親と加害者の両親。
ひとつの部屋で顔を合わせた4人は、どんな話をするのか…?
想像しただけで胸がギュッとなる状況を映画にした驚くべき作品。
事件や過去のシーンは一切なく、ほぼ全編、密室での4人の会話で、家族の関係や事件の詳細が明らかになっていく。
何が起こるのかわからない一触即発の雰囲気がなんともスリリング。
ピンと張り詰めた空気の中で交わされる、言葉と表情に目が離せなくなる。
俳優たちの間の取り方も視線の動きも演技とは思えないほどにリアルで、ドキュメンタリーを観ているような気持ちに。
言葉にし難い感情を具現化した脚本と演技、緊張感あふれる対話の行方に心が震えた。
自分ならその場にいられる自信はないけれど、実際に向き合い、気持ちをぶつけ合うことの大切さ、それでこそ超えられるものがあると改めて教えられた。
監督のフラン・クランツは『キャビン』や 「ドールハウス」などに出演している俳優で、2018 年にパークランドの高校で起きた銃乱射事件のニュースで、父兄がインタビューに答えるのを見て以来、学校内銃撃事件について深く掘り下げるようになり、入念なリサーチによって本作の脚本を書いたそう。
これが初監督だなんて、スゴすぎる。
さて今回の写真のアイテムはティッシュ。
教会の片隅にある小さな部屋での会話のみで進んでいくこの映画。
余計なものは一切出てこない中でティッシュがいい仕事してました。
「対峙」
2021年製作/111分/G/アメリカ
原題:Mass
配給:トランスフォーマー
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲