1/13(金)より公開中『そして僕は途方に暮れる』
『愛の渦』『娼年』など、自身の舞台を自ら脚本・監督をつとめて映画化してきた三浦大輔が、2018年の上演作品を映画化。
同棲中の彼女に浮気がバレて家を飛び出した主人公が、人間関係を次々と断ち切りながら逃げて逃げて逃げまくる。
甘えてばかりで現実とも人とも向き合えず、都合が悪くなるとすぐに逃げ出す主人公のクズっぷりにイラついたけれど、彼が向かう「成れの果て」と、北海道の寒々しい雪景色が相まってだんだん切ない気持ちに。
逃げたいと思っても、ほとんどの人は逃げないし、逃げるクズ男に共感はできないけど、自分で自分がわからない、どうしていいかわからない感じが伝わって、なぜだか嫌いになれない。
藤ヶ谷太輔が素晴らしい!
何より舞台版に続いて主演した藤ヶ谷太輔が素晴らしく。
その時々の言葉にならない感情が滲む「途方に暮れ顔」が絶品!
悲壮感漂う演技に魅入ってしまった。
さらに前田敦子、原田美枝子などなど脇のキャストもみんないい。
なかでも主人公の上をいくクズな父親を、おかしみたっぷりに演じた豊川悦司はさすが。
クズなりの人生訓が意外と的を得ていて、妙に感心してしまった(笑)。
クズ親子のカップそば
ということで今回の写真は、クズな親子を繋ぐカップそばをチョイス。
しんどい場面が多い映画の中で、カップそばの場面はほんの一瞬、温かみを感じさせてくれた。
大澤誉志幸が新アレンジで歌った主題歌がまたじんわり心に沁みるのだ。
ネタバレ注意!
さて、ここから先はラストシーンに触れます。
映画を観た人だけ読んでください。
↓ネタバレ注意
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家族揃ってそばを食べながら年越しをして
THE END‥のその後。
東京に戻り逃げ続けた報いを受けた主人公が、「まだ終わってねーんだよ。面白くなってきやがったぜ」と、自分の人生の主人公として進み出す描き方が好き。
最後に見せる不敵な表情も抜群でした。
「そして僕は途方に暮れる」
脚本・監督:三浦大輔
出演:藤ヶ谷太輔 前田敦子 中尾明慶 毎熊克哉 野村周平 香里奈
原田美枝子 豊川悦司
原作:シアターコクーン「そして僕は途方に暮れる」(作・演出 三浦大輔)
音楽:内橋和久
エンディング曲:大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲