伊藤さとりの映画で人間力UP!そのしきたりに根拠はあるのか?『左利きの少女』

「左利きはお嫁に行けない」「早生まれは学校生活で損をする」

そんな言葉を父親からも他人からもよく投げかけられた。案の定、家族の食卓では右手で箸を持つことを強いられ、父が家にいれば宿題の時間は右手に矯正する為の時間となった。よって幼少期からティーンまでは理不尽な思い出も多い。でも私は自分の意思で結婚をし、早生まれだろうと学校で落第することはなかった。これは昭和の話だがなんと愚かな迷信よ。が、しかし、日本だけの迷信ではなく、ヨーロッパやアジアの一部でも左利きは嫌われていたそうだ。どうやら宗教的な考えもあったようだが、映画『左利きの少女』の舞台である台湾でもそんな迷信が昔は信じられていた。

 物語の主人公は、台北の夜市に店を出すことを決めたシングルマザー・シューフェンの娘で5歳のイージンだ。母は生活費を稼ぐ為に店で必死に働いているので、ハイティーンの姉・イーアンが幼稚園の送り迎えを担当している。ある日、祖父母の家で食事をした際に、イージンが左利きであることを知った祖父から嫌な言葉を投げかけられる。「左手は悪魔の手」という祖父の言葉は、やがて彼女にある行動を起こさせてしまう。更に姉・イーアンもまた周囲に言えない秘密を抱えることになる。

実は当初、『ANORA アノーラ』(2024)でアカデミー賞を4部門受賞したショーン・ベイカーがプロデュースをしていることで注目され、第98回アカデミー賞国際長編映画賞に台湾代表としてショートリストに入り更に話題となった本作。監督を務めるのは、今までショーン・ベイカー作品のプロデューサーとして彼をサポートしてきたツォウ・シンチンだ。彼女自身が元左利きであった経験からこの物語が生まれたのだが、物語にはそんな偏見はもちろん、女性家族の身に起こる様々なエピソードにより男尊女卑まで浮き上がらせていく。考えてみれば、どうして家を継ぐのは男性でなければいけないと思う人が当たり前のようにいたのだろう。いや、今もその考えは継承されており、天皇は男系男子のみというのが現在の日本であって議論が続いている。

本作でもイージンの母シューフェンの実家を見ると女系家族なのが分かる。そこに末っ子である息子が帰ってくるとイージンの祖母は大喜びするのだ。彼の口ぶりからどうやら実家に随分と世話になっていることが見えてくる。そう、本作は社会が生み出した迷信やしきたりにより生きづらさを抱えてしまった女性達の物語だ。その迷信もしきたりも深く考えてみると何処に根拠があるのだろうか?そんなふうに疑問に思ってみると世界の理不尽が少しずつクリアに見えてくるだろう。

『左利きの少女

監督:ツォウ・シーチン

出演:ニーナ・イエ、マー・シーユエン、ジャネル・ツァイ

配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

2025 年/台・仏・米・英/108 分

8月14日(金)より全国公開

©2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

https://cinema.starcat.co.jp/left-handed-girl/

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伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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