伊藤さとりの映画で人間力UP!ナタリー・ポートマンが届けたかったメッセージ『ARCO/アルコ』

俳優・ナタリー・ポートマンが制作総指揮を務め、CHANELが協賛に入り、2025年のカンヌ国際映画祭でお披露目されたアニメーション映画『ARCO/アルコ』。本作はアヌシー国際アニメーション映画祭で長編グランプリを受賞。第97回(2025年)米アカデミー賞国際長編アニメーション賞にもノミネートされました。監督は本作で長編アニメーションデビューとなったウーゴ・ビアンヴニュ。何故、世界の映画祭でここまで評価されているのか、それにはいくつかの理由が見つかります。

近年、アニメーションは急速に進化し、3DCGアニメーションの手法を使ってリアルを追求するものが増えています。特に『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(2025年)や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』(2026年)での、背景の美しさは特に目を見張るものでした。そして第97回(2025年)米アカデミー賞最優秀長編アニメーション賞を受賞した『KPOP! デーモン・ハンターズ』では3DCGで生まれたキャラクター達がダンスをしながら歌う姿がドラマティックに映し出され、世界的大ヒットを記録しています。そんな中、『ARCO/アルコ』はあえて2Dアニメーションの手法を選択。レトロなアニメ表現で描かれる60年代のようなスタイルのキャラクター達が最新鋭の機器を持つ姿が、不思議とファッショナブルな作品へと視覚的効果をもたらしています。しかも未来から来た少年がレインボーの光線に姿を変える様がデザイン的で目に焼き付きます。

そして何より本作の評価が高い理由は、世界的環境問題である気候変動をテーマにした子どもから大人まで楽しめる作品だから。公開中のディズニー&ピクサー作品『私がビーバーになる時』も環境破壊が根底のメッセージになっていますが、『ARCO/アルコ』は気候変動で荒廃し、子育てや雑務をロボットに任せた世界に生きる孤独な少女が、更にその先の未来からやって来た少年を出会うお話。私たち観客から見ると未来と更に進化した未来をアニメーションで目撃し、どうしたら人間と自然が調和して生きていけるのかを模索するという斬新な脚本なのです。だからきっと3DCGではなく2Dアニメーションでアプローチしたのではないでしょうか。パンドラの箱を開け続ける人間に優しく警告する映画『ARCO/アルコ』は、宮崎駿や高畑勲に共通するスピリットを持っている作品のように思えました。

目次

『ARCO/アルコ

監督:ウーゴ・ビアンヴニュ

日本語吹替キャスト:黒川想矢、 堀越麗禾、梶裕貴、山里亮太
前野智昭、落合福嗣、 伊駒ゆりえ、日向未南

配給:AMGエンタテインメント ハーク

2025年/フランス/88分

4月24日(金)より全国公開

©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

https://arco-movie.jp

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伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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