岸井ゆきの「一刻も早くこの世界に入りたい」、宮沢氷魚「1分でも長く生きたい」と感じた脚本とは?映画『佐藤さんと佐藤さん』名古屋舞台挨拶レポート

岸井ゆきのさん、宮沢氷魚さんがW主演&初共演で、同じ苗字の男女の15年間にわたる軌跡を描いたマリッジストーリー『佐藤さんと佐藤さん』。

公開に先立ち、11月5日(水)に名古屋の伏見ミリオン座にて舞台挨拶付き先行上映会が行われ、主演の岸井ゆきのさん、宮沢氷魚さん、そして本作のメガホンをとった天野千尋監督が登壇。

映画のタイトルにちなみ「宣伝大使」となったメ~テレの佐藤裕二アナウンサーが司会を務め和やかな雰囲気でトークが繰り広げられました。

岸井ゆきのさん「トイレットペーパーでこんなに喧嘩するんだ!」 リアルすぎる脚本への驚き語る!

雨で寒い中、満員の観客で迎えた会場。岸井さんは「映画を楽しんでいただけると嬉しいです」と挨拶。宮沢さんは「すごい距離が近くて、皆さんの表情が奥まで見えてすごい嬉しいです」と笑顔を見せ、天野監督は「私の小さな日常の出来事から生まれた作品なんですけれども、おふたりと一緒にサチとタモツを作っていくことができて、こうして3人で舞台挨拶に立って皆さんに見ていただけることが本当に嬉しいです」と喜びを語りました。

本作は、天野監督によるオリジナルストーリー。初めて脚本を読んだ際の印象について、岸井さんは「実生活で夫婦生活っていうものを体験していない」とした上で、「(サキとタモツは)些細なことで喧嘩するんですよ」と切り出し、「『トイレットペーパーないよ』で、こんなに喧嘩するんだとか、結構ドラマチックに思えたんです、私にとっては。でも天野さんに話をうかがうと『今朝の喧嘩はね…』とか言って教えてくれたりして(笑)。他の人と生きるってこういうことなんだって思って『一刻も早くこの世界に入ってみたいな!』と思いました」 と明かしてくれました。

一方、宮沢さんは、描かれる15年間だけでなく、その先にまで想像が膨らんだという。
「描かれていない年月だったり、その物語が終わった後のさらに15年、20年ってどんな時間を過ごしてるんだろうっていうところにすごい興味が湧いて。このふたりどうなるんだろう?って、すごい興味津々だったんですよ。だから、その佐藤タモツっていう人物の人生を本当に1分でも長く生きたいっていう思いが(脚本)読んでいる時からありました」。

緊張感ゼロの初共演?「誠実だけど情けない」宮沢氷魚

本作が初共演となったふたり。岸井さんは、宮沢さんの第一印象を「すごく穏やかで優しくて、本当になんて言うんですかね、『はじめまして』みたいな緊張感がゼロでした。ほんとゼロでした!」と強調。「本当にスッと、雑談ができる」と振り返る。ちなみに、監督ともすぐにうちとけて、ご飯にいったりしたそう。

一方、宮沢さんも「(岸井さんについては)共通の知り合いから『すごく優しくて、本当に素晴らしい人なんだよ!』って聞いていたんですけど、実際にお会いしたら、自分の想像をはるかに超えるくらい本当に素晴らしくて、温かい方だったので、これは作品(撮影)に入るのが楽しみで仕方ないなっていう思いがありました」と語りました。

さらに宮沢さんは、「(岸井さんの)役に対するそのプロフェッショナルなアプローチであったり、真摯に向き合ってる姿っていうのは、(監督のほうを見ながら)僕たちだけじゃなくて、現場にいるスタッフみんなが多分感じていたので、こう穏やかなんですけど、その中にちょうどいい緊張感があって。それは、ゆきのちゃんのプロフェッショナルな部分を、みんなが感じとっていたからだと思います」と続けました。

天野監督も、リハーサル期間に3人で雑談したり、ご飯を食べに行ったりしたことで、「そこで仲良くなって、安心して現場に入れるって感覚があったのかなって思います」と、良い関係性で撮影に入れたことを明かした。

監督の実体験が企画の核に!「この物語は、男女の問題じゃなくて、立場の問題」

本作の企画のきっかけは、天野監督自身の強烈な実体験からきたものだという。
「約10年前に結婚して、出産して、子育てが始まってから、パートナーとの間で喧嘩がめっちゃ増えたんです!」。

「私はフリーランスで仕事をしていたので、(子どもを)保育園に入れられなかったんですね。で1回、家事育児をワンオペで引き受けて、夫の稼ぎに頼って生きるっていう状態になったんですけど、その時に映画の中に出てくるタモツにサキが感じたような、すごい閉塞感のある、社会から取り残されたみたいな状態を経験して。外でこう、自由に働いてる夫に対して、めちゃくちゃ、恨めしい気持ちを持ってしまったんです」 。

ところがその後、映画の仕事に復帰すると状況は逆転。
「今度は、映画の中のサチみたいに、私は外で1日中働いて、家事育児は夫に全部任せるみたいな日も出てきたんです。そしたら今度は、家で待っていた夫が、かつての私のようにすごい恨めしそうな目で私を見ているって状況がありまして(苦笑)」 。

「これは男女とか性差の問題じゃなくて、やっぱり立場によって感じることなんだなと。その立場にならないと見えないことがあるんだなっていうのを実感したんですよね。そこからサチとタモツのキャラクターが生まれました」と、作品の核となるテーマについて語りました。

キャスティングの目論見「クールな見た目なのに、ちょっと情けない役を演じたら面白いんじゃないかと」岸井さんには「バイタリティがある!」

そんな監督の思いを体現するサチ役の岸井さんについては「バイタリティがあって、芯の強いイメージ」がぴったりだったと語る。自転車が苦手な岸井さんが、本番では猛スピードでものすごく自転車運転するのがうまいひとみたいに走る姿に「この人すごい!」と驚いたエピソードも披露されました。

一方、タモツ役の宮沢さんについては、監督の中にある「目論見」があったという。
「宮沢さんの作品を拝見していると、結構クールな役を演じられてることが多いなと思っていたんです。そんな宮沢さんが、実はこう、ちょっと情けなくて、弱い部分を晒すような役を演じてもらったら面白いんじゃないかなって」と笑う。

「実際やっていただいたら、本当に誠実な方で、その誠実さがタモツのキャラクターにもすごいにじみ出ているし、それでいてちょっと空回りして情けない感じなので、こんなに誠実な人なのに、そしてこんなにクールな雰囲気なのに、なんかめっちゃ情けないみたいなのが面白くて。現場でもスタッフからすごい応援されてました(タモツ頑張れ!みたいな)。

これに対し、宮沢さんは「僕、でも普段、多分タモツに似てると思います。結構不器用で。うん、空回りとか結構するので」と認めると、岸井さんも「私もタモツ側の気持ちがとてもわかる、タモツの方にどっちかっていうと似てるので。話せば話すほど似ているなっていうのはすごい思ってます」と明かし、会場を驚かせました。

岸井ゆきの「タモツに申し訳ない気持ちにもなった」

完成した作品を観た感想について、岸井さんは撮影時とは違った視点があったと語る。

「撮影の時はやっぱり自分がサチとして動いていたので、サチをやってる時はサチの正義があるから『タモツ、しっかりして!』みたいに思う時もあったけど、完成した映画を客観して観ると、こんなにお互いの気持ちが痛くすり減っていくことがあるんだって思って。なんかすごくタモツに対して申し訳ない気持ちにもなったし、ようやくなんか自分を見るというか、サチではない自分、私にとっての『佐藤さんと佐藤さん』っていう風に見れたんですよね」。

最後に、これから映画を観る観客へメッセージが送られた。

宮沢氷魚さん:
「この映画を見て、みんな感じ方は違うと思います。でも、ぜひ友達とか家族と見た後に、ちょっと議論というか、みんながどう思ったか、『私はこう思った』っていう、自分のうちに秘めてるものとかを、ぜひこうさらけ出せるような機会を、この作品を通してね、皆さん体験していただけると嬉しいです」。

岸井ゆきのさん:
「この映画きっと見終わったら誰かと話したくなる映画になったと思うんです。なので、もしおすすめしたいなって思う人がいたら、お友達とかご家族とかパートナーとか、なんかいろんな人にこういう映画があったよって伝えてくれると嬉しいし、一緒に見に行ってくれても嬉しいし、ぜひすごく応援してくれるととても嬉しいです」。

天野千尋監督:
「私は愛知県出身で、この愛知の大学に通ってる時に映画研究会に入って、自主映画を初めて作ったんですよね。それがこう、めちゃくちゃ楽しくて、そっからこの映画作りがスタートしているので、こうしてまた、素敵な俳優さん2人と一緒に作った映画を、愛知にまた持ってきて、ここで上映していただくことができて、皆さんにご覧いただけるのは本当に嬉しいです」。

監督の地元・愛知への凱旋の言葉に、会場は温かい拍手に包まれ、舞台挨拶は幕を閉じた。去り際には、ふたりとも観客の声かけに、笑顔で手を振る場面も。

映画『佐藤さんと佐藤さん』は、2025年11月28日(金) 109シネマズ名古屋、伏見ミリオン座ほか全国ロードショー です。

出演: 岸井ゆきの、宮沢氷魚
藤原さくら、三浦獠太、田村健太郎、前原 滉、山本浩司、八木亜キ子、中島 歩
佐々木希、田島令子、ベンガル

監督: 天野千尋
脚本: 熊谷まどか、天野千尋
主題歌: 優河「あわい」(ポニーキャニオン)
配給: ポニーキャニオン
公式 https://www.sato-sato.com/

©2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会

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