伊藤さとりの映画で人間力UP!『リンダ リンダ リンダ 4K』

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『リンダリンダリンダ4K』

日本におけるガールズバンドブームはいつだったのか?

特に自分が中高生だった1980年代の印象深いバンドといえば、SHOW-YAやプリンセス プリンセスが、曲と共に脳裏に焼き付いています。あの頃は世界中がバンドブームでもあり、デュラン・デュランのジョン・テイラーに憧れ、楽器屋のショーウィンドウに飾られたベースを遠い目で眺めていたっけ。

夢中になるものを探して、友達との共通点を探して、居場所をとにかく探していたあの頃よ。

そんな学校生活を懐かしみながら、人との一瞬の繋がりを楽しんだ女子高生4人の映画『リンダ リンダ リンダ』(2005)は、当時、大いに話題となり、出演者のひとり香椎由宇に山地ふみ子映画賞新人女優賞をもたらし、韓国からの留学生を演じたぺ・ドゥナの存在を日本に知らしめました。

ちなみに劇中の演奏や歌唱は彼女たち自身によるもので、公開時にはボーカルのソン(ペ・ドゥナ)、ドラムの響子(前田亜希)エレキギターの恵(香椎由宇)、ベースの望(関根史織)が劇中名乗ったバンド名パーランマウム(韓国語:青い心)でアルバムも出しております。

何故、この映画が永遠の名作とも言われているのか。

今観て思うのは、高校時代が舞台となるとつい「恋愛」を描きがちだけれど、そうではない映画だからというのも理由のひとつかもしれない。何故なら、実際のところ友達との繋がりを一番気にしていた若者が多かったのではないでしょうか。しかも出演者全員のタイプが違い、少しの出演でさえもインパクトがある役付けになっているので、どこか親近感を持てるし、物語の隅から隅まで楽しいのです。

それだけでなく、脚本の節々に遊び心があり、意外なミュージシャンまで劇中登場するのだから、思わず声を出して笑ってしまう。THE BLUE HEARTSの「リンダ リンダ」他、カバーすることになった彼女たちを見つめる先生のひとりにバンドのボーカル甲本ヒロトの弟で俳優の甲本雅裕というのもなんだか心憎い。それにしても生徒のひとりでワンシーンしか登場しない役に松山ケンイチをキャスティングするのも、山下敦弘監督の遊び心だと思うと流石なのです。この名作が、4Kという美しい映像で甦るとは。嬉しいに決まっているじゃないですか。

リンダリンダリンダ4K

監督:山下敦弘
出演:ペ・ドゥナ 前田亜季 香椎由宇 関根史織 (Base Ball Bear)

配給:ビターズ・エンド
2005/日本/114分

8月22日(金)より全国ロードショー

www.bitters.co.jp/linda4k

©「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ

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伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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