高揚感と悲しい予感が入り混じる不思議な夏の思い出 『アフターサン』
5/26(金)より公開中
アカデミー賞主演男優賞ノミネートをはじめ、世界中で絶賛されている本作。
11歳の夏、ソフィは離れて暮らす父カラムと、トルコのリゾート地を訪れた。
降り注ぐ太陽の下、2人は楽しい時間を過ごす。
20年後、父と同じ歳になったソフィは、ビデオカメラの映像を観ながら、あの夏の記憶を辿り、当時は気付けなかった父の一面を見い出していく。
水面のきらめき、青空に浮かぶパラグライダー、性への興味、初めての感情。
わくわく心躍る、甘酸っぱくて懐かしい思春期の夏の記憶が映し出されていく。
それとは対照的に、父カラムの思い詰めたような表情や、突然挿入される不可解な行動から悲しい予感が広がって、心がざわつく。
そして印象的なラストシーン。
なんとも言い難いやり切れなさが胸に残る。
説明的な描写は一切なく、消化不良な感覚が残るせいか、観終わってからの後の引き方が凄まじく、考えるほどに好きになる。
不思議な力を持つ映画。
さて今回の写真では、父と過ごした忘れられない夏を象徴するアイテム、日焼け止めをピックアップしました。
2022年製作/101分/G/アメリカ
原題:Aftersun
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。 朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。 映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲