ギフテッドと『フェイブルマンズ』
スティーヴン・スピルバーグで育った映画人は世界中に存在する。だから本年度ゴールデン・グローブ賞作品賞(ドラマ部門)、監督賞も取っちゃうし、アカデミー賞も作品賞を含む7部門ノミネートなんだろう。だってこの映画『フェイブルマンズ』はスピルバーグが映画少年になるきっかけを与えてくれた両親への感謝と愛を込めて作られた映画なのだから、映画の神様の両親も神様だ、いや独創的なお母ちゃんだったという話。
実際、スピルバーグがモデルになる映画の主人公は列車が激突する映画を観て「衝突」する様子に魅了され、列車のおもちゃで何度も何度も衝突させる遊びを始めるのだけど、それに対してミシェル・ウィリアムズ演じるお母ちゃんは8mmカメラを渡し、「撮影したらいつでも観られる」と提案。これが映画『激突!』(1971)の製作へと繋がるのかと胸熱。他にも『プライベート・ライアン』(1998)の原点を感じる学生時代の映画製作や、妹との遊びは『E.T.』(1982)を彷彿させるし、スピルバーグ作品が好きならその分だけ存分に楽しめる作品。
それでも実は彼の心残りなのが母親との関係だったのでは?と読み取れる理由は、子どものように無邪気で繊細で人生に笑いを欲しているお母ちゃんをずっとカメラは追っているから。しかもミシェル・ウィリアムズが上手い!出逢ってしまったら一気に虜になるであろう大人少女のお母ちゃんなんだから、そりゃぁアカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得だわ。
子育てをしている人、生きづらさを抱えている人、そして自身が学習障害のひとつディスレクシア(読字障害)だと発表したスピルバーグのように特性を持った人の背中を押す作品だった『フェイブルマンズ』。ギフテッドって見方を変えればとびっきり魅力的で、その特性を伸ばせたら才能が多くの人を幸せにするんだと自伝映画を通して伝えているようでした。
概要「フェイブルマンズ」
賞レースの大本命!本日発表された第95回アカデミー賞 にて、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞、美術賞の<主要含む7部門>で 本作が堂々のノミネーションを果たしました! 先日のゴールデングローブ賞での快挙に続き、今後の展開に注目。
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:トニー・クシュナー 音楽:ジョン・ウィリアムズ 衣装:マーク・ブリッジス 美術:リック・カーター 編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー 撮影:ヤヌス・カミンスキー 原題:The Fabelmans 配給:東宝東和 上映時間:151分 © Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved. 公式HP:https://fabelmans-film.jp/ ◆公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp
伊藤さとり
ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当する。全国のTSUTAYA店舗で流れる店内放送wave−C3「シネマmag」DJ、俳優対談番組『新・伊藤さとりと映画な仲間たち』(YouTubeでも配信)、東映チャンネル×シネマクエスト、映画人対談番組『シネマの世界』など。NTV「ZIP!」、CX「めざまし土曜日」TOKYO-FM、JFN、インターFMにもゲスト出演。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿。日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。