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]]>シネマトークライブ “松岡ひとみのシネマコネクション” Vol.60 映画『碁盤斬り』
<シネマトークライブ“松岡ひとみのシネマコネクション” Vol.60>が5月26日、名古屋のミッドランドスクエア シネマで行われ、映画『碁盤斬り』から白石和彌監督が登壇! 観客らの質問に答える形で、主人公・柳田格之進を演じた草彅剛さんと囲碁で親交を深める萬屋源兵衛役の國村隼さんのエピソードや、編集や撮影についても語りました。
『碁盤斬り』秘話(前編)はこちらから
『死刑にいたる病』舞台挨拶レポート
イベント前半で、第26回ウディネ・ファーイースト映画祭で「サムライディレクター」と呼ばれていた話や主演した草彅剛さんのエピソードを語った白石監督。音楽を担当した阿部海太郎さんとの仕事については「今回、阿部海太郎さんとは初めて一緒に作業したんですけど、本当に素敵な音楽を作ってくれて。チェロでメインテーマを作って欲しいとか、ここはオケ(オーケストラ)があったほうがいいですねとか、楽器の指定をしながら作っていきました。阿部さんは哲学者みたいな方でしたね。」と振り返りました。
セットについても、「現代でアパートに住んでいますって言っても、いろんな間取りがあるように、江戸時代の長屋も調べてみるといろいろあって。格之進は、貧乏暮らしなので、貧しいけど清潔感を保ちながら暮らしているという設定で…」と話した監督。
松岡 その狭い中で、夜中まで源兵衛さんと囲碁をするっていうね
白石和彌監督(以後 白石)「すごいですよね。娘さんにとってはいい迷惑。寝たいのに、父親は友だちと一緒に囲碁を打っている。もはやゲーマーですよね。ずっと起きて。」
松岡 余分にお庚さんがお駄賃くれたのに賭け碁行っちゃうし、真面目なんだけど…
白石「そういうところは、ちょっと落語の軽妙な感じと、人間は愚かだってところが…」
松岡 そういえば編集を担当している加藤ひとみさんは愛知出身で、ずっと監督の作品を編集していますよね。
白石「天才カッター女性編集マンがいるんですよ。デビュー作から、ずっと二人三脚でやっていて。天才カッターは、僕の『こうしたい』なんて聞いてくれなくて、こっちのほうがいいです(きっぱり)」
松岡 カッターからお手紙が届いています。
白石「お手紙が来てる?ビックリした!昨日も一緒だったのに、そんなこと一言も言ってなかった。」
松岡 加藤さんの編集は、どんなところが素晴らしいですか?
白石「彼女の編集は、リズムを整えながら、もう1回脚本を書くイメージなんですよ。普通は、脚本を書いて、それを撮るんですけど、なかなかそれがリズムよく大抵うまくいってないので、それを映像を使いながら脚本を作り直すっていう。結構シーンも入れ替えて、構成し直すので時間はかかりますけど、細かいカット割りというよりは構成としてやりたいことがちゃんと伝わっているかを料理してくれてるという。
加藤ひとみさんからのお手紙
白石監督。私の地元愛知へようこそ。編集の加藤です。『碁盤斬り』公開おめでとうございます。思えばこの数年間、監督は「いつか時代劇を」と言い続けていらっしゃいましたね。監督の作品に描かれる人と人との距離感や感情のぶつかり合いは、時代劇の世界に置き換えたらそれはもうピッタリなので、私も以前から感じておりました。『碁盤斬り』の格之進は、いままでの白石作品の主人公たちと違って、清廉潔白、曲がったことが大嫌いな性格なのに、その日暮らしでままならない状況に置かれているのが、やはり監督の映画だなと感じています。京都の撮影現場から、監督がたびたびLINEで送って下さるセットの写真を見て、はしの背景が書き割りの絵で、さらにそこに雨が描いてあったりして、一体どんな映像があがってくるのか、東京の編集室でひとりワクワクしながら待っていました。今回の映画には、尺が許す限り下町歳時記のような四季折々の行事のシーンをなるべくたくさん活かそうと編集しました。特に草彅さんと國村さんの囲碁デートのくだりがお気に入りです。(確かに切ってくれなかった By監督)
観客のみなさん、今までで一番美しくエレガントな白石作品だと思っていただけたら嬉しいです。
ちなみに私が小学生の頃はよく遠足で古戦場跡地の公園に行ったものです。我が県は戦国時代劇の本場でございますので、いつか愛知が舞台の時代劇も撮って下さいね。
松岡 ぜひ、時代劇をね(会場から大きな拍手)
白石「そうですね。そうですよね。ただ、名もなき人たちが…っていうのが、僕の作品の根底にあるので、上のほうに英雄たちがいるんだけど、その端っこのほうでなんかやってる人たちを…頑張ります。」
白石「そして、編集の加藤さんがすごいのは、撮影現場に絶対来ないんですよ。」
松岡 来るんじゃなく?
白石「来ない。同じ東映の撮影所で編集してて、そこにセット組んでても来ないです。というのも、現代劇でいうと、自分家に帰ってきて、玄関があって、自分の部屋があって、編集しながらなんとなくその間取りを想像できる感じというのは重要なことらしくて、自分でセットを見ちゃうとその情報が頭の中に入ってくるから、そういうジャッジができなくなるって言うんですよね。『美味しいもんあるよ今日』って言うと、その時だけご飯を取りにきてすぐに消えちゃうんです。」
観客 デジタルのところもあれば、過去を振り返るようなシーンでは画質が少し荒くなったりしていますが、それは画素数を低くしているのか、それともフィルムで撮っているのか?
白石「二十数年前にスイス製のBOLEXっていう16ミリのカメラを買ったんですよね。買ったはいいけど、当時はまだ助監督で、16ミリも回すと結構お金がかかるので、カメラは買ったものの回すお金がないって、ずっと押し入れにいれてたのが錆びついて動かなくなってたんです。で、コロナ禍の時に、あれってどうなったんだろうって、もう一度取り出して、いろいろ業者探したら、オーバーホール(部品単位まで分解して行うメンテナンス)してくれるところを見つけて、時間もできたから遊びで撮ってたんです。そこから『死刑にいたる病』や「仮面ライダーBLACK SUN」とか、ちょいちょい使っていてその画質が面白いのと、スキャニングもいまは、フィルムで撮ってフィルム感を残すスキャニングから、フィルムなのかデジタルなのかわからないスキャニングとかもあって、いろいろ種類を試しながらやっていて、今回は敢えて過去に特化してフィルム感を残したほうが面白いんじゃないかって結論でああいう画質にしています。全体をフィルムで撮ることも考えてたくんですけど、全体をフィルムで撮るのは時代劇だとよくやっているので。
このロウソクというか、行燈の光でどれだけデジタルでも雰囲気が作れるのかっていうのが、今回の大きなテーマのひとつで。結構、暗いので、これ配信とかどうすんねんって思ってるところです(笑)。でも、この暗さって実は豊かなことだな、映画館で観るとより豊かさを感じています。
スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』(1976年公開)という映画があるんですけど、当時ロウソクの光だけで撮ってるシーンがあるんですよ。あの頃だと、感度100※とか、そのぐらいのフィルムで撮ってて、もう絶対今じゃ撮れないんだけれど、キューブリックは世界的な監督なので、レンズメーカーに超明るいレンズとかを作らせたりして、いろんなことやって撮ってたんですけど。いまは、そんな苦労しなくても、(高感度カメラで)真っ暗なところに行燈ひとつだけもってきて、そこに碁盤を置いて、あっこんな見た目なのね、そうすると芝居も変わるので、そんなことを試しながら撮ってました。
※感度の数字が大きいほど暗いところでもブレずに綺麗に撮れるが、画質は荒くなる。レンズを明るくするとたくさん光を取り込むことができるので、通常のレンズに比べシャッタースピードをあげられたり、撮影データを明るくすることができる。
ここから先は少しネタバレを含みます。ぜひ、映画を観てからお読みください。
観客 草彅さん演じる格之進と國村さん演じる源兵衛のシーンが好きです
白石「(ふたりのシーンは)完全にデートのつもりですから(笑)ぜひ、もう一回観ていただきたいんですけど、國村さん目線で言うと、隙あれば『囲碁打とう』『囲碁打とう』って言うんですよね。途中で登場する碁盤にしても「この人だ!っていう打ち手が見つかるまで、私は探していたのです」なんてことを言う。ふたりは桜の時期に出会っているのに、月見の時に言う。絶対、値踏みしてたよねっていう。最後も、楽しそうにしながら碁盤を取りにいく、そういう目線で見ると、おかしくて」
「僕にとって初めての時代劇を、草彅さんはじめ、こんな素敵なキャストのみなさんと京都の歴史ある撮影所で撮ることができたのは、すごくいい思い出ですし幸せな時間でした。この作品でハマって時代劇が大好きになって、もう1本撮ってしまいました。草彅さんは、やっぱりすごい俳優なので、なかなかこうぎゅーって捕まえるのは難しいですが、チャンスを見つけてまた一緒にやりたいと思っているので、ぜひ楽しみにしていただければ、楽しい時間をありがとうございました」と言葉を結んだ白石和彌監督。
映画『碁盤斬り』は、5月17日よりミッドランドスクエア シネマほかで公開中です。
取材・文・写真 にしおあおい( シネマピープルプレス編集部 )
浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。
しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている。
ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。
お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選び……。
父と娘の、誇りをかけた闘いが始まる!
『碁盤斬り』 監督 白石和彌 脚本 加藤正人 音楽 阿部海太郎 小説 「碁盤斬り 柳田格之進異聞」加藤正人 著(文春文庫) 出演:草彅剛 清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親 立川談慶 中村優子 斎藤工 小泉今日子 / 國村隼 撮影:福本淳 美術監督:今村力 美術:松﨑宙人 照明:市川徳充 録音:浦田和治 編集:加藤ひとみ 配給:松竹 配給:キノフィルムズ ©2024「碁盤斬り」製作委員会 公式サイト https://gobangiri-movie.com/
日本映画の黄金期を支えた名脚本家・ #笠原和夫、幻のプロットが
映画化━━━━━━━━━━━━━
𓊆 映画『#十一人の賊軍』𓊇
2024年11月1日(金)公開
━━━━━━━━━━━━━#山田孝之#仲野太賀 W主演!!……
監督:#白石和彌
企画・プロデュース:#紀伊宗之
脚本:#池上純哉… pic.twitter.com/1qkSu2kvl0— 映画『十一人の賊軍』公式 (@11zokugun_movie) May 26, 2024
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]]>シネマトークライブ “松岡ひとみのシネマコネクション” Vol.60 映画『碁盤斬り』
公開中の映画『碁盤斬り』のトークイベントが5月26日、名古屋・ミッドランドスクエア シネマで行われ、白石和彌監督が登壇。主演した草彅剛さんのエピソードや、「幽玄の間」での秘話などを披露。さらに、普段はなかなか聞けない撮影や編集などの技術的なトーク繰り広げられました。
<シネマトークライブ “松岡ひとみのシネマコネクション” >とは
映画パーソナリティーの松岡ひとみがコーディネートし、ミッドランドスクエア シネマで開催しているトークイベント。60回目となる今回は、ずっと登壇を熱望していた白石和彌監督をゲストに迎え、映画『碁盤斬り』について、根ほり葉ほり深堀りトークしています。
映画の上映後、大きな拍手で迎えられた白石和彌監督。ミッドランドスクエア シネマには『死刑にいたる病』の舞台挨拶で、阿部サダヲさんと来て以来2度目。先に行われたミッドランドシネマ 名古屋空港のイベントでは、小学生の男の子から「プロ棋士の芝居」について聞かれたことを明かし「熱い質問をいただいて嬉しかった」と笑顔で冒頭の挨拶を飾りました。
本作は、古典落語の演目「柳田格之進」をベースにした時代劇で、いわれなき罪によって娘と引き裂かれた男の復讐劇が繰り広げられます。主人公・柳田格之進役を演じるのは草彅剛さん。映画のタイトルにもなっている「囲碁」が重要なアイテムとなっています。
武士の誇りを賭けた「復讐」を描く、感動のリベンジ・エンタテイメント!!
今回、自身初の時代劇に挑戦した白石監督は「時代劇が好きでたくさん見ていたので、チャンスがあればやってみたかった」と振り返り「黒澤明監督や小林正樹監督の時代劇に刺激をたくさんもらった」と言います。また、『碁盤斬り』を撮ったことで、ますます時代劇を好きになったことを明かし「チャンスがあればまたやりたい!」と意欲を見せました。
サムライディレクター、イタリアでサムライラーメン食べる
先日イタリアで行われた、第26回ウディネ・ファーイースト映画祭では「ブラック・ドラゴン賞」を受賞。その時のエピソードで「サムライディレクター」と現地の人たちから呼ばれていたという白石監督は「イタリアの人たちは、サムライムービーが好きなんでしょうね。海外のディレクターやクリエイターと話をしていると、『やっぱ俺サムライ映画作りてー』って言ったり『みんな忍者見たいに決まってんじゃん!』とか言うんですよね。憧れがあるみたいで」とその反響を明かすと、
「ウディネは小さな街なんですよ。街を歩いていたら『サムライラーメン』というお店があったので、中に入ってラーメン食べてたら『サムライディレクターがサムライラーメン食べてる(笑)』みたいな感じになって…。僕は一言も自分のことをサムライディレクターなんて言ってないんですけど、なんかそういう風になっちゃいました。」と、会場の笑いを誘いました。
きっかけは、本作の脚本を手掛ける加藤正人さん「Netflixのオリジナルドラマ『火花』、映画『凪待ち』(香取慎吾主演)、今回の『碁盤斬り』で3作目の共同作業になるんですけど、彼には3つ趣味があるんです。
ひとつは「競輪」、ふたつめが「囲碁」、そして3つめが「お酒」なんです。ひとつめは『凪待ち』という作品で描いたんですけど、今度は「囲碁の映画をどうしても作りたい!」と、なぜか僕に声をかけてきて。加藤さんの夢を叶え続けているドラえもんみたいになっています(笑)」
ルールを知らない人でもドキドキするような「勝負の綾」を描きたかった
松岡「囲碁」を題材にした映画は日本ではあまり見ないですね
白石和彌監督(以後 白石)「囲碁を題材にしている映画は、韓国や中国の作品だといくつかあるんですけど、観ると、囲碁の「勝負の綾」をちゃんと描くのは、非常に難しいんです。チェスや将棋だと自分の駒を動かして相手の駒をとっていくので、攻める感じが見せやすいんですけど。
囲碁の碁石は一度置いたら動かせず、取った石は終局後に数えるので、その陣地が生きてるのか死んでるのかが素人目にはすごくわかりづらい。でも、そんな囲碁のルールを知らない人にも、見ててドキドキするような「勝負の綾」を感じてもらいたかったのと、囲碁がわかる人にも、その手筋がどうなっているのか感じていただきたかったので、囲碁監修をしていただいた高尾紳路九段に、『ここはもう一手打たないんですか?』『これは?』って何度も聞いて『いや、その先を打ったらプロじゃない』みたいなせめぎあいをしながら撮っていました。
ただ、最近はインターネットで実況聞きながら、プロが打っているのを見たりもするんですけど。そういうのを見ると一手一手に意味があって、攻めてるのか、守っているのか、様子をうかがっているのか、全部ストーリーがあることに気がついて、俳優にも、「この手は攻めてます」とか「無理かなって思いながらも攻めてる手なんです」って一手一手、意味合いを伝えるようになったら、みなさんどんどん表情が変わっていくんです。さすが、俳優って思いました。
あと、プロ棋士の方の話で興味深かったのは天才中の天才でも、わからないまま打っていることも多いと。「うわぁ、もうちょっとこれ、どうなるかわからないけど、時間もないし、こっちへ打ってみよう」みたいなことを高尾九段や井山九段のような方が言っている。
それって映画(作り)に似てるなあと。映画も、日々この芝居で楽しいのか、カットをどう割るか、結果背中からカメラを入れることにしたけど、本当にそれで良かったのか…みたいなことを、延々悩みながらやっているので、囲碁も一緒だなって。そういう精神性の部分は、今回すごく役に立ちました。」
「幽玄の間」の妖気漂う部屋に、普通に革ジャンを着た草彅さんが座ってる
その座り姿にはやっぱり品があるんです
松岡 俳優のみなさんは「囲碁」をかなり練習されて?
白石「プロが打つ囲碁は、とても綺麗なんです。だから、俳優陣にも自信を持って、その打ち方を覚えてもらいたいと思って、囲碁のセットを渡したりして。
日本棋院の中に「幽玄の間」と呼ばれる、それこそトップ棋士しか打てない部屋があるんですけど、そこで草彅さんは囲碁を打つ練習をしたんですよね。『本当にこんなところでやっていいの?』と思うぐらい、妖気漂う部屋なんです。
そこに、草彅さんがやってきて『囲碁ってどうやるの~?』『あーこうやるんだ』『ちょっとやってみるね』『あれ、うまくできてない…意外と難しいなこれ…』とか言いながら、ずっとやっているんですけど。(部屋の空気の重みを感じているから)『この軽さ大丈夫かな?』と、ちょっと不安になったんですよ。
だけど、「幽玄の間」の妖気漂う部屋に、普通に革ジャン着た草彅さんが座っている、その座り姿にはやっぱり品があったんですよ。それを見て『これはいけるわ!』と思いました。クランクイン3か月前のことです。撮影に入ると、『なんかすごいな!』という感じが不思議と草彅さんにはあって、やっぱりすごいな~と思いました」
『碁盤斬り』を撮って時代劇が大好きになりました
草彅さんともチャンスを見つけてまたやりたい
松岡 底なし俳優ですからね…穏やかに物語がスタートするなか、復讐劇が始まると草彅さんがどんどんすごい顔になっていきます。
白石「原作の落語は、50両の濡れ衣をかけられ、娘の絹(清原果耶)がお金を作るから、疑いをかけたふたりの首ちゃんととってくださいみたいなお話で、藩を追われた免罪事件の復讐劇はオリジナルです。
だから、前半は囲碁を通して草彅さん演じる格之進と國村隼さん演じる萬屋源兵衛が親交を深めていく話しで、濡れ衣をかけられてからは映画のトーンも変えたいと思っていました。藩を追われた格之進の過去の話も明らかになっていくし、攻め入るようなトーンでどんどん物語が渋滞していく。
今じゃ考えられないですけどね。父の仇討ちを決行するために絹は自分を犠牲にする道を選びますけど、これが今なら「復讐より娘を助ける金を作れよ!」と、談志師匠も、娘が身売りしてお金を作っていく下りが嫌で『柳田格之進』は、あまりやらなかったそうなんです。結末も、演じる人によって違う。絹が吉原に行って父と再会できないパターンもあって、どんな結末にするかは、いろいろ考えましたね。
だけど、ちゃんと吉原の厳しさを描くことも必要だとは思ってました。
松岡 その厳しさを小泉今日子さん演じるお庚が担いますよね。
白石「『大つごもり(大晦日)までに、お金を作ってくれれば…』というギリギリのタイムサスペンスにしながら、旅に出ていくという感じにしています」
松岡 コトの真相を伝えにくる左門との道中はハラハラドキドキします。
白石 「旧知の藩士で格之進の過去を知る左門が来たことよって、格之進の心が歪んでいく感じをどう出していくのかは、もう、あの手この手と考えましたので、映画館で楽しんで欲しいです。」
「僕にとって初めての時代劇を、草彅さんはじめ、こんな素敵なキャストのみなさんと京都の歴史ある撮影所で撮ることができたのは、すごくいい思い出ですし幸せな時間でした。この作品でハマって時代劇が大好きになってしまいました。草彅さんは、やっぱりすごい俳優なので、なかなかこうぎゅーって捕まえるのは難しいですが、チャンスを見つけてまた一緒にやりたいと思っているので、ぜひ楽しみにしていただければ、楽しい時間をありがとうございました」と言葉を結んだ白石和彌監督。
レポート後編では、サプライズ演出や、草彅さんと國村さん演じる格之進と源兵衛に注目。後日アップをお楽しみに。
映画『碁盤斬り』は、5月17日よりミッドランドスクエア シネマほかで全国公開中です。
取材・文・写真 にしおあおい( シネマピープルプレス編集部 )
浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。
しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている。
ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。
お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選び……。
父と娘の、誇りをかけた闘いが始まる!
『碁盤斬り』 監督 白石和彌 脚本 加藤正人 音楽 阿部海太郎 小説 「碁盤斬り 柳田格之進異聞」加藤正人 著(文春文庫) 出演:草彅剛 清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親 立川談慶 中村優子 斎藤工 小泉今日子 / 國村隼 撮影:福本淳 美術監督:今村力 美術:松﨑宙人 照明:市川徳充 録音:浦田和治 編集:加藤ひとみ 配給:キノフィルムズ ©2024「碁盤斬り」製作委員会 公式サイト https://gobangiri-movie.com/
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]]>10日名古屋のミッドランドスクエア シネマで行われた<松岡ひとみのシネマコネクションVOL.56>に登壇した成島出監督と横山和宏プロデューサー。映画制作の裏側やファンからの質問に答えました。イベントレポート後編です。
※ あまりに内容が盛りだくさんなので、今回は前後編に分けてお届けしています。
イベント後半は、会場の観客の質問に成島監督と横山プロデューサーが質疑応答に答える形で進行しました。
観客「俳優のみなさんの演技が素晴らしくて、大好きな原作がよりいい映画になったような印象を受けました。杉咲花さんも近年成長著しいと感じているのですが、俳優陣のエピソードとかありましたら教えて下さい。」
松岡「主人公・貴瑚役の杉咲さんとはかなり意見を交わし合ったとお聞きしています。」
成島監督「そうですね。今回はこういう役なので。安吾役の志尊くんや他のキャストもそうなんですけど、腑に落ちないものがあったり、どこか引っ掛かるものがあると、思い切って演じられないこともあるだろうと思い、シナリオの早い段階からミーティングを重ねて意見を聞きました。あとは、いろんな専門の方にも入っていただいたり、いろんな方に相談して。ご覧になるとわかるように、この映画は俳優にとって演じるのに勇気がいるんですよね。その「怖い」という恐怖を「大丈夫ですよ」と取り除いて安心してもらうための環境づくりは大事にしました。
例えば、トランスジェンダーの監修をしてくれた佑真くんは、劇中にも出ているんですけど、すごく丁寧に志尊くんともやってくれて。花ちゃんも、ヤングケアラーから、虐待から、いろんなことを考えながら納得して作っていくために『少しでも引っ掛かるところがあったら遠慮しないで言ってね』という形で作って」
松岡「横山さんは、一番近くでご覧になっていたと思うのですが、印象的なやりとりみたいなものは?」
横山P「印象的なのは、1週間のリハーサルです。本読みにしても、通常の本読みと違って録音部さんがマイクを立てて録音するんですよ。実際に、クジラの声を流したりして、そういう中で本読みをする。
その後、1週間かけてリハーサルをしていくんですけど、重要なシーンはほぼやったんです。それによって、撮影前に俳優陣は「こうやればいいんだ」っていうのが見えてきたんじゃないかと思います。
あと監督自身は、最初から100%全力でやって欲しいというのは常々おっしゃっていて、それに対して俳優陣は演技で応えていて。中でも印象深いのは、志尊くんは叫んで崩れ落ちるシーン。あの演技をリハの一発目でからやったんですよ。あぁいう演技プランでくるなんて、想像してなかったこともあって、僕は非常に驚いたし感銘を受けて。非常に贅沢な時間を過ごさせていただいたし、手応えを感じました。」
松岡「貴瑚さんは、その全員と関わるキャラクターです。いろんなことを自分の中に落とし込むのは、大変ですよね。」
成島監督「リハーサル中は、みんなで集まってゲームみたいなことをやったり、あとはエチュードっていって、劇中には出てこないシーンとシーンの間にある出来事や時間を実際にやってみるなんてこともしていました。例えば、5歳の貴瑚がお母さんから受けてた虐待を実際に演じてみたり、そういうところから役を掴んでいくようなことをしていました。」
観客2「いろんなことを考えさせられる映画でとても良かったです。アンさんから貴瑚そして愛(いとし)へとクジラの声が受け渡されるのがとても良かったのですが、アンは誰から受け取ったのかなーと気になりまして…」
成島監督「そこは、ちょっと設定せずに。うん。いくつかの仮設定はありますけど、偶然耳にしたものがすごく引っ掛かって、琴線に届いて大事にしていたという。映像だと、文字の情報以上にリアルになってしまうので、アンさんも貴瑚もギリギリのところで生きてきて、死にそうなところから物語は始まるし。
でも、今おっしゃっていただいたように、アンが貴瑚を救い、貴瑚が愛(いとし)を救うって流れが、この原作を映画にできる大きな意味だと思いました。それを伝達することは、映画を作る上で大事にしていました。」
ここから先は、少しネタバレを含みます。まだ未見の方は映画をご覧になってからお読み下さい。
観客3「印象に残ったのはアンとお母さんの関係と、お母さんのセリフで。原作も読んだのですが、変わっていたのが印象的でした。私自身、セクシャルマイノリティということもあり、当事者や家族の方によくお会いしてお話を聞いていたので、小説も映画もとてもリアルに感じました。ポスターの写真をみて感じたことがあるのですが…」
成島監督「そこは、想像してもらえたら嬉しいです。原作から映画で少し変わっているセリフについては、原作の町田そのこさんが、この小説を執筆されてる当時と現在では、トランスジェンダーやセクシャルマイノリティについての距離感や考え方もだいぶ変わっているんですよね。今では使わない言葉を使っていたり、映画の場合は、そこがすごく大事だと思ったので、そういう風に描きました。
安吾とお母さんの関係は、すごい残酷だと思います。あれだけアンさんを愛しているお母さんが、結果的にアンさんを追い詰めていくっていう。絶望。あれが、多分リアルなんですよね。だから、映画では表現する必要があった。だけど、撮っていてとても辛かったですね。」
成島監督「今日は、俳優陣と一緒に来れたら良かったんですけど…」と口にした監督は続けて「今回パンフレットの出来がすごく良くって!さっきお話ししたような花ちゃんや志尊くんや、氷魚くんたちが、どう悩んで、どう役に向き合ったのかっていうインタビューや撮影裏話が割と充実しているので、じっくり読んでもらえると嬉しいです。あと、挨拶の冒頭でお話したサウンドトラック。これが本当によくて。最近、あんまりサウンドトラックをCD化しないんですけど、今回はお願いして作ってもらいました。台詞はなく音楽だけオープニングからエンディングまで繋がっているので、ドライブ行く時にかけるとか、劇中の大分の風景を思い出しながら聞いてくれると嬉しいです。これ営業じゃなく言ってます。」
横山P「今日はありがとうございました。 よろしかったら、感想投稿キャンペーンなどもやっていまして #52ヘルツきこえた で感想を書いていただけたら嬉しいです。映画を観て「52ヘルツの声」聞こえた方も多いと思うので、ぜひそういった声を「可視化」して、大きな声に繋げていければと思います。今日はありがとうございました。」
この日、山形から名古屋に来た成島出監督と横山和宏プロデューサー。山形では、本作の音楽を担当した小林洋平さんとも一緒だったそうで、冒頭は音楽の話で盛り上がりました。
成島監督は「みなさんパンフレットに載ってる小林さんの経歴みたら腰を抜かしますよ!」と興奮気味にその経歴を紹介すると「僕、これ最初に見た時に、どういう方なんだろう?と興味がつきなくて…、音楽の作り方も、いわゆる普通の作曲家の方とはちょっと違って、緻密に積み重ねていく感じが、ちゃんと物語に寄り添っているのに距離感がコントロールされてて、普通はもっとベタってしてしまいがちなんだけど、さすがだなって思いましたね。」と語りました。
実は、彼を監督に紹介したのは横山プロデューサー『異動辞令は音楽隊』で小林さんに音楽をお願いした時に、クジラの声を使った楽曲があったので、成島監督に推薦させてもらいました。彼は、オーケストレーションを使うのもうまいんですけど、サックス奏者でもあるので『異動辞令は音楽隊』ではサックス奏者を演じた高杉真宙さんにサックスを教えてたりもしましたよ。」と裏話を披露しました。
わざわざ監督が、サウンドトラックをCDにした『52ヘルツのクジラたち』。CDを聴きながら、原作小説を読むのもいいかもしれませんね。
今回【前編】【後編】の2回にわけてお届けした『52ヘルツのクジラたち』イベントレポート。
まだ前編をご覧でない方はこちらからお楽しみ下さい ↓
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映画『52ヘルツのクジラたち』は、2024年3月1日(金)よりミッドランドスクエア シネマほか全国で大ヒット公開中です。杉咲さんや志尊さんのインタビューをはじめ、撮影裏話も多数掲載されているパンフレットは、上映劇場で発売中です。監督「激推し」のパンフレットよかったらお手にとってみて下さい。
ホスト役(MC):松岡ひとみ 取材・文:にしおあおい シネマピープルプレス編集部
そしてイベント終了後には、YouTube番組『ドラマチック×シネマチック』の収録も!
映画プロデューサー森谷雄さんも加わり、ノンストップで行われた収録は、さらなるキャスティング秘話や裏話も、大いに盛り上がりましたよ。花ちゃん&花梨ちゃん大親友秘話も、ぜひ聞いてみて下さいね。
https://youtube.com/@user-en4lr2qh9b?si=31HTs3uB8kabifLV
↑ チャンネル登録もよろしくお願いします!
さらに、シネマピープルプレスでは『52ヘルツのクジラたち』応援企画として、特製トートバックが当たるSNS連動プレゼント企画を実施中。この日、監督にみなさんが投稿された感想をお伝えすると、とても喜んでいましたよ。詳細は下記ページをチェック!
傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた貴瑚は、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会う。かつて自分も、家族に虐待され、搾取されてきた彼女は、少年を見過ごすことが出来ず、一緒に暮らし始める。やがて、夢も未来もなかった少年に、たった一つの“願い”が芽生える。その願いをかなえることを決心した貴瑚は、自身の声なきSOSを聴き取り救い出してくれた、今はもう会えない安吾とのかけがえのない日々に想いを馳せ、あの時、聴けなかった声を聴くために、もう一度 立ち上がる。
作品名:52ヘルツのクジラたち 監督:成島出 脚本:龍居由佳里 原作:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」(中央公論社) 主題歌:Saucy Dog「この長い旅の中で」 出演:杉咲花 志尊淳 宮沢氷魚 小野花梨 桑名桃李 金子大地 西野七瀬 真飛聖 池谷のぶえ 余貴美子 /倍賞美津子 2024年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/136分 配給:ギャガ ©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会 公式サイト:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/ 公式X:@52hzwhale_movie
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]]>映画パーソナリティーの松岡ひとみさんが、セレクトした映画の上映とトークを行う<松岡ひとみのシネマコネクションVOL.56>が10日名古屋のミッドランドスクエア シネマで行われ、話題作『52ヘルツのクジラたち』から成島出監督と横山和宏プロデューサーが登壇! 映画制作の裏側や作品への想いを語ったり、ファンとの交流を深めました。
※ あまりに内容が盛りだくさんなので、今回は前後編に分けてお届けします。
本作は、2021年本屋大賞に輝いた町田そのこさんの同名小説を成島出監督が映画化したヒューマンドラマ。大分を舞台に、現代人が抱えている孤独とそこに寄り添う魂の絆を繊細に紡いだ物語は、大きな反響を呼んでいます。
映画化を発案したのは、横山和宏プロデューサー(以降、横山P)。主人公の貴瑚と彼女が助けようとする少年の関係に“疑似家族”というワードが浮かんだという彼は「監督の撮っている『八日目の蝉』に近しいものを感じてお願いしようと思いました」と振り返る。
「原作を読んでもらったら、『プロデューサーに会いたい』と連絡が来たので『やってくれるんだ!』と思いながら、ギャガ(配給会社)に来てもらったんです」
ところが、成島監督の返事は想像しているものとは違っていたという。「『ちょっとこの原作は難しいと思うよ』と言われて…『まさか断られる?』みたいな雰囲気になって『ヤバイヤバイヤバイ』と思いました。パンフレットとかにも書かれてますけど『この声なき声を届けたい!全国300館のスクリーンで届けたいんです』って必死に熱弁して…監督は若干ひいてましたけど(苦笑)」と熱意で押し通したそう。
それを受けた成島出監督(以降、成島監督)は「繊細な題材がこう山積みになっているので。映画では、文字で説明されている部分も、役者のセリフや肉体だけで表現しなくてはいけない。作り手にとっても役者にとってもすごくハードルが高いことなんです。しかも書かれている内容は『どれもすごく大事な問題』生半可に扱ってはいけないのに、それにひとつひとつ誠実に向き合いながら2時間ちょっとでやるのは、ミッションインポッシブル(極めて危険で難しい任務)だなって思ったんです」と真摯に向き合ったからこその言葉だったと明かす。
横山P「もちろん監督のご懸念も考えもすごくわかったので、こちらとしては一緒に『上澄みをすくう』のではなく、きちんと深く向き合って作ることを一緒にやっていきましょうとお話しました。」
成島監督「そこからが長い道のりで…、今日、こうやってみなさまに観てもらえているのは本当に感慨深いです。」
松岡「実際、映画化が決まるまでに、どのぐらいかかったんですか?」
横山P「21年に本屋大賞を受賞して、その後コンペティションという形で数十社の中から選んでいただいて」
松岡「コンペですか?」
横山P「そうですね。ベストセラー作品や人気作は、コンペ形式で決まるものも結構多いんですよ。監督が『八日目の蟬』を演出なさっていることもあって、出版社の方も期待をして下さいましたね。」
成島監督「『八日目の蟬』も中央公論新社という同じ出版社だった。そのご縁もあって」
横山P「そこから3年ぐらい?」
松岡「その間に、他の作品を撮りながら?」
成島監督「そうそう。準備を進めながら『ファミリア』と…あれ?どの順番だったかな?公開は続いたんですけど、撮ったのは少し離れていたんで」
ちなみに編集部で調べたところ『ファミリア』が2020年3月にクランクイン、コロナ禍で期間が空いて2021年冬に撮影が再開、2022年の5月から6月に『銀河鉄道の父』を撮影。本作は2023年の8月から9月に撮影されたそうです。
横山P「(原作が大分を舞台にしているので)最初は大分にシナリオハンティングに行きました。脚本の龍居由佳里さんとプロデューサーチームと成島監督で行って、そこで劇中に出てくる貴瑚の家を偶然見つけることができたというのがあって、あそこは田ノ浦ビーチの上のほうなんですけど、そこで辺りの風景を見ながらハンティングしていた時に、たまたまその家の大家さんが、家の維持のために大掃除に来てたんですよ。そしたら龍居さんがいきなり『家、見せてもらえませんか?』ってお声がけして、快く受け入れて下さったことが、使う経緯へと繋がりました。」
松岡「セットではないんですね」
成島監督「そうです!今回、最初に大分に行った時に、貴瑚の家と防波堤と、とり天のお店、あと煙突の町とかも見つけて。それで、今話に出てきた家の大家さんが『昔はザトウクジラが来たんですよ』って言ってて『田ノ浦ビーチの沖で潮吹いてた』と。我々は、よく映画の嘘で『大分』という設定で、房総半島や伊豆で撮ったりするんですけど、これはもう『大分に呼ばれてる!』って。『これでまた逃げれなくなったな』という感じはありましたね。そんなことなかなかないです。しかも一発で。その後も、制作部さんがいろんなとこ探してくれたんですけど、やっぱりあの家に適うものはなかった。映画を観てもらうとわかるんですけど、我々もあの風景には随分救われました。東京編だけだったら絶対行き詰ってたし、辛いだけの映画になるところでした。あの海を見下ろす風景と、風と光が、我々を助けてくれました」
松岡「劇中で印象的に登場するテラスですが、あれはもともとあの家に?」
成島監督「あれは僕がリクエストして、美術さんに作っていただいたものです。」
横山P「原作だと縁側なんですけど、家の縁側だとそこまでの広さはなかったので、監督のアイデアで、京都の鴨川にあるような川床式のテラスを美術部さんに作っていただきました。美術部のアイデアであの亀甲模様の六角形のテラスが生まれて、非常に神秘的な場所になったのかなと思います。」
松岡「映画を観て、行ってみたいと思ったけど、もうないんですよね」
成島監督「残念ながら。残して、もし怪我でもしたら大変なことになるので、泣く泣く解体しました」
横山P「あと上と下で持ち主が違うんですよ。今考えると、よく許してくれたなって思いますね」
成島監督「捕鯨船って、一番高いところに丸いデッキ(見張り台)があって、そこでクジラを発見する人のことをボースン(甲板長)と呼んでいるんです。黒澤明さんの『天国と地獄』にも「ボースン」というあだ名の刑事が出てくるんですけど…。だから僕は、勝手にそのデッキ(映画に出てくるテラス)のことを「ボースンデッキ」って呼んでいるんです。イメージしたのは「ボースンデッキ」のような、空に浮かんでいて、天空にも行けるような場所。そんな風にできたらいいよねって話をさせてもらって、あとは美術部が見事に応えて設計してくれたっていう。映画ならではのシーンは、このテラスがあったから生まれたものなんです。あのテラスがあったからアンさんはあそこに立てたんですね。」
松岡「私、食いしん坊で申し訳ないんですけど、食堂の「とり天」が気になって気になって、あれは地元の名物なんですか?」
横山P「名物です。大分は、とり天とかりゅうきゅう(地元でとれた新鮮な魚を、醤油、酒、みりん、ごま、しょうがでつくるタレと和えていただく、大分の代表的な郷土料理)とか、宮﨑が近いこともあって唐揚げも有名です。先ほど、お話したシナリオハンティングで、媛乃屋食堂にも昼食で行って、とり天定食をはじめ、どの料理も非常においしいんですよ。しかも琴美(西野七瀬/少年の母親)のいる店に、すごく近い雰囲気が出せるんじゃないかなと、シナハンなのにロケ撮影の許可をお願いしたっていう(笑)」
松岡「じゃあ、あのお店は実在するんですね!」
成島監督「あるんです!それで、とり天セットっていうのは、とり天とりゅうきゅう丼っていう魚の漬け丼みたいなものなんですけど、そこに使われてる魚が関サバ、関アジなんですよ。贅沢に。安い1000円ぐらいでしたっけ?」
横山P「もうちょっとしますね1200円とか」
成島監督「それでも、すごく安くてあまりにおいしいのでハマっちゃって、媛乃屋さんには本当によく通いましたね。花ちゃんもすごく気に入って、近くでロケした時は、3連チャンしてましたね。」
松岡「大分に行ったら、ぜひロケ地巡りの行程に加えたいですね」
成島監督「媛乃屋のご主人も映画に出ています。あれ本物のご主人なんです。媛乃屋のご主人は、週に一度は沖に出て釣った魚を捌いて、メニューとして出しているので非常に鮮度が高いんですよ。」
トークが盛り上がる中、質問コーナーに。キャストとの撮影の裏側や音楽について熱く語った内容は【後編】でお届けします、お楽しみに。
映画『52ヘルツのクジラたち』は、2024年3月1日(金)よりミッドランドスクエア シネマほか全国で大ヒット公開中。ぜひ、映画館の大きなスクリーンで「声なき声に」耳を傾けながら、みて、感じて、語りあって下さい。
ホスト役(MC):松岡ひとみ 取材・文:にしおあおい シネマピープルプレス編集部
そしてイベント終了後には、YouTube番組『ドラマチック×シネマチック』の収録も!
映画プロデューサー森谷雄さんも加わり、ノンストップで行われた収録は、さらなるキャスティング秘話や裏話も、大いに盛り上がりましたよ。
https://youtube.com/@user-en4lr2qh9b?si=31HTs3uB8kabifLV
↑ ぜひ、チャンネル登録もよろしくお願いします!
さらに、シネマピープルプレスでは『52ヘルツのクジラたち』応援企画として、特製トートバックが当たるSNS連動プレゼント企画を実施中。この日、監督にみなさんが投稿された感想をお伝えすると、とても喜んでいましたよ。詳細は下記ページをチェック!
傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家へと移り住んできた貴瑚は、虐待され、声を出せなくなった「ムシ」と呼ばれる少年と出会う。かつて自分も、家族に虐待され、搾取されてきた彼女は、少年を見過ごすことが出来ず、一緒に暮らし始める。やがて、夢も未来もなかった少年に、たった一つの“願い”が芽生える。その願いをかなえることを決心した貴瑚は、自身の声なきSOSを聴き取り救い出してくれた、今はもう会えない安吾とのかけがえのない日々に想いを馳せ、あの時、聴けなかった声を聴くために、もう一度 立ち上がる。
作品名:52ヘルツのクジラたち 監督:成島出 脚本:龍居由佳里 原作:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」(中央公論社) 主題歌:Saucy Dog「この長い旅の中で」 出演:杉咲花 志尊淳 宮沢氷魚 小野花梨 桑名桃李 金子大地 西野七瀬 真飛聖 池谷のぶえ 余貴美子 /倍賞美津子 2024年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/136分 配給:ギャガ ©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会 公式サイト:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/ 公式X:@52hzwhale_movie
The post 成島監督が制作秘話明かす『52ヘルツのクジラたち』名古屋のイベントで(前編) first appeared on シネマピープルプレス.
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