レジェンドTAYLOWも胸キュン!田口トモロヲ監督が放つ魂のパンク

再現度の高さに胸キュン「最初の一歩」を刻んだパンクの熱狂
田口トモロヲ監督×TAYLOW(the 原爆オナニーズ)が語る映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の舞台裏

3月27日公開の映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の舞台挨拶付き先行上映会が、2月27日に名古屋・センチュリーシネマで行われました。登壇したのは、本作でメガホンをとった田口トモロヲ監督と、名古屋パンクシーンの重鎮「the 原爆オナニーズ」のTAYLOWさん。当時のエピソードや作品に込めた想いを熱く語りました。

舞台は、パンク・ロックで世界を変えたセックス・ピストルズが解散した1978年の東京。カメラマンになる夢に挫折した青年・ユーイチが、パンクに触発されて次々と誕生するバンドたちの姿を目の当たりにし、インディー・シーンの架け橋として深く関わっていく姿が描かれます。

ゲストのTAYLOWさんは、1982年に名古屋で結成された「the 原爆オナニーズ」のボーカリスト。40年以上にわたり独自のスタイルを貫き、今なお第一線で活躍し続けるリビングレジェンドです。

田口トモロヲ監督(以下、田口): 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』ついに名古屋上陸でございます(拍手)。そして、名古屋と言えば 「the 原爆オナニーズ」今日はTAYLOWさんも来てくれて本当に嬉しいです。

田口: 昔、僕が『ばちかぶり』というバンドをやっていた頃に共演させていただき、それ以来の付き合いです。今日は当時の貴重なチラシも持ってきていて、みんなに自慢したいくらい(笑)。

TAYLOW: 持っていてくれて嬉しいですね。最初の出会いは、僕らがファーストアルバムを出す時に、渋谷のライブハウス「屋根裏」でライブをやるから「東京のバンドを呼びたい」と連絡したのがきっかけです。京都の「スペルマ」、大阪の「アウシュビッツ」、そこに「ばちかぶり」が入ったら面白いよね、と。

田口:もう名前負けしてますね。その人たちが凄すぎて…「ばちかぶり」なんて全然響かない(笑)

TAYLOW:それが1985年の夏です。

田口:映画は観ていただいて?

TAYLOW:観ました。描かれている内容が自分の青春そのもので、涙が出そうになりました。映画の舞台である1970年代後半、僕はまさに主人公と同じようなことをしていたんです。「東京ロッカーズ」との関わりも、東京へ遊びに行った時に「今度、京大西部講堂でライブをやる」と教えてもらったのが始まり。当時は人と会えばすぐに連絡先を交換して、直接繋がっていくのが当たり前の時代でした。

MC: 当時はバンドマンではなく、一人のファンとしてシーンを見ていたのですね。

TAYLOW:そうですね。ただの「パンク好きの兄ちゃん(パンクス)」でした。

MC:「東京ロッカーズ」をはじめとする当時のシーンは、これまで語られる機会が少なかったように思いますが、田口監督にとっても少し上の世代になりますよね。

田口:憧れの存在でしたね。みんな年上で、強くて、中には怖い人も多かった(笑)。原作者の地引(雄一)さんはお優しい方でしたが、その背中を追いかけながら自分の活動を始めた感覚があります。

MC:ちなみにTAYLOWさんは、劇中に登場するイベントにスタッフとして参加されていたとか。

TAYLOW:そうなんです。THE STAR CLUBというバンドのスタッフをしていたので、劇中のシーンを見ていても「あ、これ(当時の自分なら)この後ろに立っているな」という場面がいっぱいありました。

田口:こんな(平和な)舞台挨拶の日を迎えられるなら、TAYLOWさんに映画に出てほしかったですよ。

TAYLOW: あの頃はみんな常に怒って、やさぐれていましたから(笑)。怖いことも多かったですが、なぜか年上の人に対しても上から目線で話していましたね。

(この日、TAYLOWさんは当時のイベントチラシなど貴重な私物をお披露目。これには田口監督も「完敗です!」と脱帽。名古屋の音楽シーンの歴史が紐解かれる貴重なトークが展開されました)

そして、話は映画の話へ。

田口:当時は、レコードを出すならメジャー契約が必須という価値観の時代。そこに「東京ロッカーズ」という、古い概念を壊して新しいシーンを作ろうとする人たちが現れた。彼らは崖っぷちに咲いた花のように孤高で、だからこそヒリヒリして格好良かったんです。今のようにファンが大勢いるわけではなく、客が15人、20人入れば「やった!」という世界。

TAYLOW:20人入ったら大万歳でしたからね。

田口:屋根裏(ライブハウス)で20人入れば「ギャラを山分けだ!」となるんですが、一人400円とか。それでも大喜び。1,000円を超えたらパンクスとしては大金持ちでした(笑)

TAYLOW: 当時、メジャーバンドのチケットが800円くらいで、我々は500円くらいでしたから。

MC:当時を直接知るTAYLOWさんから見て、劇中の再現度はいかがでしたか?

TAYLOW:新宿ロフトのシーンなどは「俺、このあたりにいた!」と思うくらい再現されていて嬉しかったです。裏方でスタッフが苦労していたのも見ていましたから。

田口:まさに歴史の目撃者ですね。当時の空気には、今にはない特有の緊迫感がありました。ステージに立つ側も「これをやらなければ死んでしまう」という切迫感があった。そこは嘘をつけない部分。当時のライブハウスはもう残っていないので、すべて美術でセットを組んだのですが、あまりの緻密さに中に入った瞬間、鳥肌が立ちました。

TAYLOW:冒頭の渋谷「屋根裏」の再現度はダントツでした。ロフトと屋根裏は、当時のバンドマンにとって憧れの聖地。そこが再現されているのを見て、思わず「胸キュン」してしまいました。

田口:あの原爆オナニーズのTAYLOWさんが「胸キュン」なんて言葉を使う時代になるとは!

MC:楽屋のギスギスした空気感や、バンド同士の敵対心もリアルに描かれていますね。

田口:他のバンドがいる間は楽屋に入らない、なんてこともありました。

TAYLOW:対立というより、相手のセッティングや集中を邪魔しないという、ある種の「思いやり」でもあったんです。まあ、終わって気分が悪いとパイプ椅子が飛んできたりしましたけど(笑)。

田口:そんな状況でピースフルな歌を歌ったら、もはや詐欺ですからね(笑)。あと、僕がインパクトを受けたのは「毒マ〇〇」のようなガールズバンド。名前からして衝撃的ですが、とにかくインパクト勝負のバンドがひしめき合っていました。

MC: 最後に、今の時代にこの映画を通して伝えたいメッセージをお願いします。

田口: 今の日本にはロックフェスが根付き、ビジネスとしても成功しています。しかし、その礎となった「最初の一歩」を刻んだ人たちのことは、これまであまり語られてきませんでした。その事実を知り、「これは自分が作るしかない」と思ったのがきっかけです。「フェス」や「インディーズ」という形を作った先駆者たちの存在を知ってほしい。制作に11年かかりましたが、「こんなに凄い奴らがいたんだ!」という想いを、これでもかと詰め込みました。自由に受け取ってください。

TAYLOW: 自分でレコードを作る、自分たちでイベントを組む。そんな「最初の一歩」の尊さが、今は忘れられがちな気がします。監督がそれを映画にしてくれたことが本当に嬉しい。色々な「始まり」が描かれているので、ぜひ楽しんでください。

スマートフォンもSNSもなかった時代。「自分たちの音楽を、自分たちの手で届ける」という【D.I.Y.】の精神で、メジャー中心の音楽業界に風穴を開けた若者たち。既存のシステムに抗い、道を切り開いた彼らのエネルギーは、今も消えることのない火種として鳴り響いています。ぜひ、大きなスクリーンで目撃して!

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は3月27日よりセンチュリーシネマほか全国公開です。

取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部)

【作品データ】
タイトル:『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
監督:田口トモロヲ
原作:地引雄一「ストリート・キングダム」(K&Bパブリッシャーズ刊)
脚本:宮藤官九郎
⾳楽:⼤友良英
出演:峯⽥和伸 若葉⻯也
吉岡⾥帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ
⼤森南朋 中村獅童
​企画製作・配給︓ハピネットファントム・スタジオ
©2026 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会
上映時間:130 分

公式サイト:https://happinet-phantom.com/streetkingdom/

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