映画『僕の中に咲く花火』先行公開初日舞台挨拶、清水友翔監督、安部伊織、葵うたのが岐阜ロケでの撮影秘話語る

岐阜を舞台に、生と死を見つめる少年のひと夏を描いた青春映画『僕の中に咲く花火』が、8月22日に名古屋・センチュリーシネマほかで先行公開初日を迎えました。上映後の余韻が残る会場に、主演の安部伊織さん、ヒロインの葵うたのさん、そして本作で長編デビューを飾った清水友翔監督が登壇。監督自身の経験が色濃く反映された本作への想いや、台風に見舞われたという撮影時のエピソードなどを語りました。

「作品が重めな分、舞台挨拶は明るくワイワイいきたい」と語った3人。冒頭から、清水監督が渾身のボケを披露すると、安部さんが「ここは笑うところです(笑)」とツッコミをいれ、和やかな雰囲気で舞台挨拶はスタートしました。

最初は清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんの3人でスタートした舞台挨拶。サプライズゲストがどんどん増えていき…。

撮影が行われたのはちょうど2年前の2023年の夏。安部さんは「明日、甲子園の決勝ですよね。撮影中の唯一のオフが2年前の甲子園の決勝の日で、ちょうど2年経ったのかと思うと感慨深いです。すごく暑くてジメジメしていて、映画の雰囲気にあった天候でした」と当時を振り返ります。

一方、葵さんは「岐阜で過ごした時間は、私だけ撮影がない単独行動の時間が結構あって。一人で川辺に行ったり、サウナに行ったり、地元の方と仲良くなったりして、それが役に良い影響を与えたかなと思います」と、岐阜での滞在を満喫したエピソードを披露。

すると、清水監督と安部さんは「僕たちは朝から晩までずっと撮影していたので、それをいいなぁ〜って」と羨ましそうに話を聞く場面もありました。

清水監督は「最初の作品は、生きているうちに1本しか撮れないので、それを伊織くんとうたのさんと撮れてよかったです」と喜びを滲ませ、安部さんも「監督とは同い年なので、プライベートでもすごく仲良くさせていただいて、一緒に旅行に行ったりする仲になりました」と、明かしチームの仲のよさをうかがわせました。

映画の神様が味方してくれた?
撮影初日にやってきたのは…

観客から、嵐の中を安部演じる稔が自転車で走るシーンについての質問が上がると、撮影初日の印象的なエピソードが明かされました。

「学校から帰るあのシーンは、雨で撮る予定ではなかったのですが、撮影初日に台風が直撃してしまって。でも、それをうまく利用しました。天気が本当に味方してくれて、すごく印象的なシーンになりました」と安部さんが語ると、清水監督も、黒澤明監督の『八月の狂詩曲』をイメージしたと、日本映画の巨匠たちへのリスペクトを込めて演出したことを明かしました。

タイトルに込められた想い

オーディションで初めて脚本を読んだ時の感想を問われたふたり。

安部さんは、監督の経歴を知り「だからこそ大切に演じないといけないと思いましたし、オーディションを受けている最中から、漠然と、なぜか自分になるだろうなと思っていました」と、運命的な出会いであったことを明かします。

一方、葵さんは、「脚本に書かれていたのは『知ってる痛み』で、私自身が読んで救われた部分があったので、これはやるべきだ!やりがいがある作品だ!!」と、物語に深く共感したことを語りました。

稔の父親を加藤雅也さんが寡黙ながら存在感たっぷりに演じています。

また、清水監督は「僕の中に咲く花火」というタイトルに込めた意図を説明。「花火がピューっと打ち上がっていくところが人の悲鳴に聞こえ、バンっと弾ける瞬間が実際に爆発しちゃう瞬間、そして空中に漂う煙が成仏していく魂のように感じて、自分の中ですり合わさってこのタイトルをつけました」と、独自の死生観が反映されていることを説明。

舞台挨拶の途中には、稔の祖母・花子役を演じた水野千春さんと、企画当初から本作を支えたエグゼクティブプロデューサーの竹内力也さんがサプライズで登壇。

竹内さんは、監督と最初に名古屋駅のデニーズで会った日のことを振り返り、「本当に熱量がすごかった!夢を持っている方を信じるということを続けてきた会社なので、今回この作品が形になって本当に嬉しいです」と、若い才能を信じ支援した喜びを滲ませました。

最後に登壇者から観客へメッセージが送られ、清水監督は「本当に苦しい思いをしている人がいると、意外と手を差し伸べてくれる人たちがいる。それが、映画という形になったのが、この作品です。辛い時は、この作品ができた経緯を思い出してもらえれば」と締めくくり、温かい拍手に包まれながら舞台挨拶は幕を閉じました。

映画『僕の中に咲く花火』は、8月22日(金)よりセンチュリーシネマ、岐阜CINEX、TOHOシネマズ岐阜、TOHOシネマズモレラ岐阜、大垣コロナシネマワールドほか先行ロードショー。

8月30日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショーです。

劇中で、渡辺哲さん演じるおでん屋の店主が発する言葉が、出汁がよく染みただいこんのように心にじわぁあ〜っと沁み入る作品。
渡辺哲演じるおでん屋の店主

ぜひ劇場で、どこか懐かしさを感じる岐阜の風景とともに、そっと心に寄り添う物語を感じてみて。

舞台挨拶前にスリーショットをお願いした時のカット。こちらは、作品のテイストを表情で…ということでキリリ。どちらも素敵ですよね。

取材・文 にしおあおい(シネマピープルプレス編集部

作品紹介

【ストーリー】田園風景の豊かな岐阜県にある田舎町。小学校の頃に母親を亡くしている大倉稔は、家にほとんど帰ってこない父親と不登校で引きこもっている妹に頭を悩ませていた。10年前に亡くなった母を未だ忘れられない稔は、死者と交流ができる、と話題の霊媒師を訪ねる。そこで「ドラッグ」が臨死体験に似た働きをすることを知った稔は、死後の世界への好奇心から非行の道を走り始める。そんな折、東京から帰省してきたという年上の女性、朱里と出会う。どこか母親のような優しさを併せ持つ朱里は、稔の心の寂しさを埋めてくれる存在になっていく。しかし、稔の前で起こった不幸な事件が稔の心がこれ以上ないほどに引き裂かれてしまう。死への好奇心が恐怖に変わってしまったことで、彼の胸の内に潜んでいた狂気が姿を現し始めるのだった。

『僕の中に咲く花火』PG12
出演:安部伊織 葵うたの 角心菜 渡辺哲 / 加藤雅也
水野千春 佐藤菜奈子 平川貴彬 米本学仁 桜木梨奈 田中遥琉 古澤花捺 國元なつき
監督・脚本:清水友翔
プロデューサー:落合賢
衣装:宮本まさ江
音楽:伊藤明日香
2025/日本/ビスタ/93分
配給:彩プロ
公式 https://bokuhana.ayapro.ne.jp/
©ファイアワークスLLP

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