伊藤さとりの映画で人間力UP! オスカー候補、押さえておきたい3作とは?

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アカデミー賞ノミネート映画がやってくるFebruary。

毎年、この時期になると映画鑑賞で目まぐるしくなる理由は、3/2に開催される米アカデミー賞予想の為。私自身もメディアで紹介する機会が多いので先にチェックするように心がけているんですが、今年は本命と言われる作品が2月公開でいち早く見られますよ。そんな2月公開のオスカーノミネート映画で特に個人的オススメの3作をご紹介します。

[ゴールデングローブ賞勝者は天才監督]

まずは、大本命のひとつと言われるオスカー10部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞、撮影賞、美術賞、作曲賞)の『ブルータリスト』。この映画は2/21に公開がスタートしますが、インターミッションまで途中に入る215分という上映時間。そんな映画を作り上げた監督は現在36歳のブラディ・コーベット。この方、実は元子役で俳優としてはクレイジー過ぎる胸糞映画『ファニーゲーム』のU.S.A.版(2008年)の悍ましい青年のひとりピーターを演じています。

その後、初監督作品『シークレット・オブ・モンスター』(2016)で、ある少年の狂気を描き、第72回ヴェネツィア国際映画祭(オリゾンティ部門)で監督賞、初長編作品賞を受賞した経歴の持ち主さん。この監督が今回、興味を持った題材が、ホロコーストを生き抜いてアメリカへやってきたユダヤ人建築家の数奇な運命について。実在した人物や建物からインスパイアされて物語を自身でつむぎ上げた結果、ここまでの長尺になったそうで、それでも脚本に痺れた俳優陣が出演を決めたという才能の塊です。

建築家が主人公なのでアート的な構図美も感じつつ、あくまでも俳優の演技アプローチに焦点を当てているのは、ご本人が俳優業経験者だから。それが主要人物を演じた俳優3人がオスカーノミネートに繋がったというのは、納得でしかありません。

[イケメン俳優、ティモシーの魂の演技は見もの]

そこに斬り込んでくるのが主演男優賞ノミネートのティモシー・シャラメ。彼が主演兼プロデュースを務めたのが『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。こちらも今月の2/28公開なんですよね。今も健在するカリスマ・アーティスト、ボブ・ディランの半生を描く作品なのですが、ボブになりきろうと歌とギターの練習に5年間を費やし、口調から歌い方、ギタープレイにハーモニカ演奏まで見事ボブになっているんですよ。つくづく音楽を生み出すアーティストの人生は破天荒であり、多くの期待を背負わされるのだと気付かされ、それでも君臨する理由はカリスマ性なんだと納得の作品。ただティモシーがオーラを消そうとしても顔面が美しすぎて釘付けになる、というマジックも持った映画です。オスカー8部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、音響賞、衣装デザイン賞)で『ブルータリスト』の後を追います。

[観客を虜にさせるアノーラ]

ここでもうひとつ注目したい2月公開のオスカーノミネート作品をご紹介。

実はこの映画も2/28に公開になるんですが、オスカーでは6部門ノミネート(作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、編集賞)。かなりライバルが強者揃いなのでドキドキですが、個人的に大のお気に入り作品なのが『ANORA アノーラ』です。「ロミオ&ジュリエット」のような身分違いの恋が題材ですが、『フロリダ・プロジェクト』や『レッド・ロケット』といった社会的弱者に寄り添うショーン・ベイカー監督らしく、主人公はストリップ・ダンサー。そんな彼女と恋に落ちるのは、世間知らずのロシアの御曹司。彼との豪遊三昧でお金に変えられない真実の愛に気づくアニーですが、やがて彼女の前に立ちはだかる壁を知った瞬間、もはや涙腺崩壊。見るとアニーが大好きになる傑作。生々しい演技と人間の欲が渦巻く青春映画は、映画賞関係なく観てほしいラブな作品でした。

[他にも気になる事件モノ映画]

この他にも2/14は脚本賞ノミネートの『セプテンバー5』も公開。これは実話をベースにした監督による脚本で、ミュンヘンオリンピック事件を現場にいたテレビカメラマンの視点で描いた作品。よくぞ報道側の視点で事件を綴ろうと思ったもんだと感心しきり。手に汗握る95分です。

果たして3月公開のもうひとつの本命と言われるオスカー最多ノミネートとなる12部門13ノミネート(作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞、編集賞、撮影賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、音響賞、作曲賞、歌曲賞、国際長編映画賞)『エミリア・ペレス』とどう競っていくのか。かなり楽しみなので、これらの作品をチェックするのもオススメですよ。

🔳『セプテンバー5』2025年2月14日(金)公開

配給:東和ピクチャーズ

©2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 

🔳名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

2025年2月28日(金) 全国公開

©2025 Searchlight Pictures.

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

■『ブルータリスト』
2025年2月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

 

🔳『ANORA アノーラ』 2月28日(金)全国ロードショー

配給表記:ビターズ・エンド ユニバーサル映画

©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures

 

伊藤さとり

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

映画コメンテーターとして「ひるおび」(TBS)「めざまし8」(CX)で月2回の生放送での映画解説、「ぴあ」他で映画評や連載を持つ。「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談番組。映画台詞本「愛の告白100選 映画のセリフでココロをチャージ」、映画心理本「2分で距離を縮める魔法の話術 人に好かれる秘密のテク」執筆。

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