エリコのフォトdeシネマ♪ Vol.137『52ヘルツのクジラたち』

杉咲花の圧倒的な感情表現に心震える 『52ヘルツのクジラたち』

3/1(金)より公開中

2021年、本屋大賞を受賞したベストセラー小説の映画化。原作は未読ながら、実力派揃いのキャストに惹かれて鑑賞。

“52ヘルツのクジラ“とは、あまりに高音のため他のクジラたちに鳴き声が聴こえない、世界で一番孤独なクジラだそう。

映画では家族に虐待され、人生を奪われた貴瑚、人に言えない秘密を抱えた安吾、虐待され声を出せなくなった少年と、過酷な現実を生きる“52ヘルツのクジラ“たちの心の叫び、そして声なき声を受け取ってくれる
“魂の番(つがい)“の存在と、ささやかな希望の光が描かれる。

児童虐待、ヤングケアラー、デートDV、トランスジェンダーの苦しみなど、現代社会の深刻な問題が詰め込まれた辛い内容ながら、
真摯に向き合った成島出監督はじめ作り手たちの覚悟が伝わってきた。声にならない痛みや苦しみを、生の感情として体現するキャストたちの演技も圧巻!

『市子』に続く難役を圧倒的な感情表現で演じた杉咲花、安吾の複雑な想いを繊細に演じた志尊淳、
今までのソフトなイメージとは違う攻撃性を見せる宮沢氷魚、さらに西野七瀬と真飛聖の毒親ぶりも凄まじく。傷付けられる側だけでなく、
傷付ける側もまた“52ヘルツのクジラ“のように感じられて、胸が締め付けられた。

私にはクジラの声が聴こえるだろうか?少なくとも耳をすませる人間ではありたいな。

さて、今回の写真のアイテムは2つ。ひとつは安吾が貴瑚にプレゼントしたら“52ヘルツのクジラ“の鳴き声を
聴くイヤホン、そしてもうひとつは、絶望の中にいた貴瑚が、同級生の美晴と安吾と会い
生まれて初めて飲む生ビールを。壮絶すぎる貴瑚の人生で、数少ない希望を感じさせてくれるアイテムをピックアップしました。

 【52ヘルツのクジラたち】

町田そのこによる原作「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)は、2021年の本屋大賞を受賞し、累計発行部数100万部目前の圧巻の傑作ベストセラー小説。「52ヘルツのクジラ」とは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている――。

主演・杉咲花(すぎさき・はな)が演じるのは、自分の人生を家族に搾取されてきた女性・三島貴瑚(みしま・きこ)。ある痛みを抱えて海辺の街に越してきた貴瑚は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれる、声を発することのできない少年と出会う。彼との出会いが呼び覚ますのは、貴瑚の声なきSOSを聴き、救い出してくれた、今はもう会えない安吾との日々だった――。愛を欲し、誰にも届かない声で泣く孤独な魂たちの出会いが生む、切なる愛の物語。メガホンを取るのは、『八日目の蝉』『銀河鉄道の父』の名匠・成島出(なるしま・いずる)。

【ストーリー】

ある傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家に移り住んできた貴瑚。虐待され「ムシ」と呼ばれる少年との出会いが呼び覚ましたのは、貴瑚の声なきSOSを聴き救い出してくれた、今はもう会えないアンさんとの日々だったー。

【キャスト】

杉咲花 志尊淳
宮沢氷魚 / 小野花梨 桑名桃李 金子大地 西野七瀬 真飛聖 池谷のぶえ / 余貴美子 / 倍賞美津子

【スタッフ】

監督:成島出 原作:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社刊) 主題歌:「この長い旅の中で」Saucy Dog(A-Sketch) 脚本:龍居由佳里 脚本協力:渡辺直樹 音楽:小林洋平

製作幹事・配給:ギャガ 制作プロダ クション:アークエンタテインメント

製作委員会:ギャガ U-NEXT 朝日放送テレビ 中央公論新社 日本出版販売

© 2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

映画ライター 尾鍋栄里子(おなべえりこ)

Twitter @onabe11
映画館バイト→雑誌映画担当→映画ライターと、人生の半分を映画業界の片隅で生きる名古屋人。
朝日新聞、中日新聞、フリーペーパーなどで映画紹介記事を執筆中。
映画フリーペーパー C2【シーツー】web版ブログ〝オー!ナイス!”不定期掲載

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